「島ネタCHOSA班」2011年09月22日[No.1382]号
浦添市の国際センター前にできた「前田トンネル」の文字が、下書きなしで書いたような、手書きに見えます。書体はいろいろあるはずなのに、なぜあの文字になったのか調べてください(2011年09月22日掲載)
トンネル名は手書き?
(浦添市・めーだんちゅさん)
さっそく現場検証へ。浦添警察署向かいから入り、国際センターを左に見ると、ありました、2つ穴のトンネルが。長さ約92メートル、現時点では、片穴1車線通行です。確かに手書きと思われる文字もさることながら、その短さも気になる調査班。
前田トンネルのある「浦添南第一地区」と呼ばれる一帯の区画整理を進める、浦添市都市建設部を訪ねました。区画整理課の比嘉徹さんと知念正也さんが、大きな地図を広げながら説明してくれました。
「全体の計画では、約83ヘクタールの土地にトンネルは2つの予定です。浦添警察署~前田トンネル~サンエー経塚シティをつなぐラインは、国際センター線と呼びます。区画整理地の中央を通るので、事業の中では、もっとも早く着手したんですよ」
トンネルにしては、短いような気がしますが…?
「あえてトンネルになったのは、玉城朝薫の墓を保存するためなんですよ」
組踊の始祖と言われる玉城朝薫の墓は、市指定文化財。2穴の中央、真上に鎮座しているそうだ。文化財を拝するトンネルとはユニーク。聞くと、もともとムイ(小高い丘)だった現在の場所にある意義を考えて、移築することなくとどまったのだそう。なるほど、長さはそんなに重要ではなかったわけですね。さて本題。あの文字は、公募か何か?
「前田トンネルは、新しい街の顔になるからと、思い切ってあの方にお願いしたんです。普通の半紙に書いた6文字を、それぞれ1メートル四方に拡大しました。はねとかかすれとか、墨汁だまりなども忠実に再現するよう、けっこう気を遣いましたよ」
書いたのはこの人
「掲揚した後で見に行ったんだけどね、もっと大きな筆で太く書けば良かったかなーと思ってね」
と語るその方とは、儀間光男浦添市長。おぉ! 市長自らお書きになったんですか。実は前田トンネルは、玉城朝薫の墓とその周辺の文化財を載せているだけでなく、将来、モノレールがすぐそばを水平に通る予定。多くの方が目にするシンボルになるからとの職員の思い入れから、市長に白羽の矢が立ったというわけです。市長、ふだんから書をたしなまれるんですか?
「いえいえ、自己流なんでね、朝薫さんに笑われてないかねー」
親しみを込めて朝薫さんと呼ぶ口調からも、地域に対する愛情を感じます。
「”ン“に一番こだわって書きましたよ。このはね具合、いいでしょう」
新しい街が発展するように、勢いを込めて書いたそう。「書・儀間光男」と添えてはいかがですか? と水を向けると、「いやいや、恥ずかしいですよ」と相好をくずす市長。
「前田はね、グスク時代から続く歴史ある地域なんです。先日、歴史ガイドの方と40分ほどかけて歩いてみたんですけどね、文化財や井戸などの生活の様子がうかがえるものまでが非常にたくさん点在している。あんな激しい戦争があって、よく残ってくれました」
しみじみと語る市長。新しい街づくり、どうイメージしていますか?
「ゆったりね、歴史とか文化を体感できる、人のたたずまいを感じる、というかな。のんびりね、スローがいいですよ」
玉城朝薫の墓に象徴されるように、地域の宝を保存・継承しつつ、と語る市長。完成にはまだまだ時間がかかりますが、急がずのんびりと楽しみにしています。