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[No.1408]

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「島ネタCHOSA班」2012年03月22日[No.1408]号

「保栄茂」なぜビン?

私は県外出身なのですが、先日「保栄茂」と書いて「ビン」と呼ぶ地名が豊見城にあると聞きました。どこをどうすれば「ビン」なのでしょうか? 不思議でなりません。(2012年03月22日掲載)

「保栄茂」なぜビン?
(那覇市 Dさん)

 Dさん、心配ご無用! 不思議に思っているのはあなただけではありません。なぜなら、ここにも数人、頭をかかえている者がおりますから。まず、この「保栄茂」を読める割合はどんなものかしらん? と、友人たちに聞いてみると…驚くなかれ! 「ほえも?」なんて言う輩もかなり多いことが判明。まったく、ウチナンチュの風上にも置けやしない。ますます、本腰を入れて調査にあたる必要がありますな、これは!!

 ボヘムだった?

 と、意気込んで訪ねたのは当該地域である「保栄茂」の自治会長をされておられる當銘神栄さん。

 「ちょこちょこ聞かれるんですが、実はハッキリとしたことはわからんのですよ(笑)」

 へ!? わからないんですか?

 「こうじゃないかっていう話ならあるんですがね」

 それを、ぜひ! 是が非でも、お願いします。

 「唯一、文書に残っている呼称は『ほへむ』らしいんです。これは『おもろさうし』という琉球王府時代につくられた歌集に載っておるそうで、さらに、当時の習慣で濁音を省略して記述するらしく、実際には『ボヘム』ではないか? そこから、沖縄がウチナーと読まれるように『オ』の段を『ウ』と発音するので、『ブイン』となり時代の流れで『ビン』となったのではないか? と」

 ほ~。『ボヘム』が『ブイン』で『ビン』に…。しかしですよ、『保栄茂』という漢字はどうなるんです?

 「これも諸説ありまして、主流となっているのは、薩摩侵攻ではないか? と言われております」

 ほうほう、薩摩侵攻ですか?

 「はい。薩摩侵攻後、琉球の各間切りなどの名称がひらがなから漢字へと本土風に改められていったそうです。そこで、王府の役人が『ホヘム』にそれぞれめでたい漢字をあてて『保栄茂』となったと言われているんです」

 ふ~む。当て字というわけか。

 「ただ、面白い話もありましてね」

 おぉ! 面白い話、大好きです。

 

 謎が謎を呼ぶ…

 「私があるバスガイドさんから聞いた話なんですが、彼女が中国からの観光客の方々をガイドされていた時に、たまたま保栄茂のバス停の前を通って、『これでビンと読むんですよ、面白いでしょう』と話したそうなんです。すると、その中国の方が、この漢字の地名は中国にもあるとおっしゃって、さらに中国語では『ベン』と読むんだよと」

 『ベン』!? 近いじゃないですか! じゃあ、もしかすると中国から来たってことも?

 「それは分かりません。最初にお断りしたように、はっきりとこうだとは断定されておらんのですよ(笑)。地元の人間でも『ホエモ』と呼んでいる方々も結構おられます、役所でも公式に『ビン』と決めているわけでもないですしね」

 え? 公式に決められてもいないんですか?

 「そうなんです。最近では地元の小学校の社会科の授業でも扱われているようで、子どもたちからも取材を受けることもあるんです。そういう取り組みも、謎に包まれた地名だからこそでしょうね(笑)」

 さまざまな仮説が浮上した今回の調査。さらには、公式に『ビン』でもなく、『ホエモ』でも厳密には間違いではないらしい…友人たちを輩呼ばわりしたワタクシって…。友よ、許しておくれ。


「保栄茂」なぜビン?
當銘神栄さん
「保栄茂」なぜビン?
県道7号にある「保栄茂」のバス停
「保栄茂」なぜビン?
しっかり「びん」と彫られている
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