「島ネタCHOSA班」2012年05月24日[No.1417]号
先日、土産品店で枯れないハイビスカスを見掛けました。沖縄の花はなぜ枯れないのでしょうか?(2012年05月24日掲載)
沖縄の花は枯れない!?
(那覇市30代 Y・T)
枯れない花? 造花じゃないの? それともドライフラワー? もしかしてガセネタ(偽情報)では? そんな疑問を抱きながら調査員、早速、土産品店に行ってみました。
きっと造花だろうなぁと思いながら店内を物色。あ、ありました! 「枯れない花 ハイビスカスプリザmade in Okinawa」と書かれています。どうすれば美しく咲き続けることができるのでしょうか? その秘密を探ろうと、製造・販売をしている那覇市天久の枯れない花プリザーブドフラワー専門店「アトリエ スケアクロウ」を訪ねてみました。
特殊な液で加工
美しい枯れない花々に囲まれたアトリエで調査員を迎えてくれたのが同社代表取締役社長の玉田るみ子さん。花について無知な調査員に枯れない秘密を丁寧に説明してくれました。
「プリザーブド」とは英語で「失われないように保存する、保護する」などの意味があるそうです。生花には寿命があり、日がたつと枯れてしまいます。特殊な液で加工して生花の組織とその美しさを保つのが「プリザーブドフラワー」。フランス発祥で、日本でもウエディングブーケやインテリアフラワーなどで人気があります。
作り方はまず、生花を脱水液に1日ほどつけて水分と色をぬきます。次にコラーゲンやヒアルロン酸などが入った染色液に浸して保湿を与え、色をつけます。
「コラーゲンとヒアルロン酸!」。化粧品に使われている美肌の基ではないですか。花も人間も美しくなるために必要なものは同じなんですね。お肌の曲がり角を過ぎてしまった調査員も染色液に漬かりたい…。
調査員の肌の再生はさておき、色は12色を掛け合わせて作ります。本来の色に近づけるだけでなく、好きな色に染めることもできるそうです。
2工程を終えた花は乾燥させて仕上げます。乾燥時間は天気に左右され、途中で雨が降ったりすると時間が長くなるとのこと。加工する液の調合や乾燥時間は花の種類や大きさによっても異なるそうです。
花で地域興しを
プリザーブド歴約20年の玉田さん。全国的にバラが主流な中、「沖縄のトロピカルな草花でプリザーブドを作りたい」と思っていました。約1年かけてリサーチをし、沖縄の花として「ハイビスカス」がプリザーブドに適していると考えました。
しかし、ハイビスカスにもいろいろな種類があり、めしべの長さも異なります。また、花びらは薄くて割れやすく、めしべが取れやすいという課題もありました。「保湿剤の濃度やつける時間など何度も試しました。たくさん失敗しましたが、探求心でやったんですよ」と笑顔で話します。長年のカンを頼りに試行錯誤を繰り返し、約2年がかりで商品化を実現。赤やブルー、オレンジ、イエロー、グリーン、ピンクの6種類を販売しています。
実はこの枯れないハイビスカス、2001年2月、巨人軍が那覇キャンプで訪れた際、各選手のホテルの部屋にウエルカムフラワーとしても飾られたそうです。南国らしい鮮やかな花びらが選手の疲れを癒やしたことでしょうね。
沖縄の花で地域興しをしたいと考えている玉田さん。県内の観光施設や企業などから観賞用パイナップルやクチナシ、ブーゲンビレアなどのプリザーブドについて相談を受け、アドバイスをしています。「沖縄にはたくさんの草花があります。県内各地の市花や町花などをプリザーブドにすれば、地域の特産品ができます。今後はプルメリアやシダの葉などにも挑戦したいですね。夢は広がるばかりです」と玉田さんは瞳を輝かせていました。
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玉田さんのアトリエで枯れない花々に囲まれて取材をしていたら、心が穏やかになりました。沖縄の枯れない花が世界中の人の心に潤いを与えてくれたらいいなぁとしみじみ思う調査員でした。