「島ネタCHOSA班」2012年05月31日[No.1418]号
先日、家の前でホタルを見たのですが、誰もこの話を信じてくれません。絶対に見たんです! 調べてもらえませんか?(2012年05月31日掲載)
沖縄はホタルのメッカ?
(宜野湾市 Sさん)
ホ~ッホ~ッホ~タル来い♪こっちのみ~ずはあ~まいぞっと。そうですかSさん絶対に見たんですね? そりゃ、見たっておっしゃるからには調べないわけにはいかないですけど…でも、しかしですよ、住所は宜野湾でしょう?そんな街中でホタルをねぇ? 皆さん、どう思います?
水生と陸生?
ズバリ専門家に聞いてみようとやって来たのは琉球大学資料館「風樹館」。対応していただいたのは学芸員の佐々木健志さん。早速ですがホタルが住宅街にいることってあるんですか?
「ええ。ありえますよ」
そうでしょう。ほら見なさいSさん。あるハズがないって…ええぇ!! ありえるんですか!?
「はい(笑)。おそらくご覧になったのはオキナワスジボタルかクロイワボタル、オキナワマドボタル。この3種のいずれかだと思いますよ」
でも、ホタルはきれいな水辺に生息しているんじゃ?
「皆さんそのイメージを持たれていると思うのですが、それは水生ホタルのゲンジボタル、ヘイケボタル、それに久米島にしか生息していないクメジマボタルだけなんです。ホタルには水生と陸生の2種類がいるんですよ」
ふ~む。水生と陸生ですか。
「ええ。国内には約56種のホタルが生息しているんですが、その中で水生、つまり成育過程で水が必要なホタルはさきほどの3種類しかいないんです。その他はすべて陸生で、通常は森林などに生息しているんですが、餌であるカタツムリやミミズなどがいる湿った草むらやお墓などがあれば街中でも生きていくことができるんです。実は水生の方が珍しいんですよ(笑)」
へぇ~。ホタルと聞いてイメージする方が少数派だったんですか!
「ちなみに県内にはゲンジボタルもヘイケボタルも生息していませんので、久米島を除いて沖縄のホタルは全て陸生です」
国内の半数は沖縄に!?
では、きれいな水がない街中でも陸生ホタルなら普通に見られるんですね?
「本土ではなかなか難しいのですが、沖縄では比較的、観察しやすいんですよ」
それはなぜでしょう?
「沖縄県の面積は日本全体のわずか0.6%しかありませんが、日本に生息する56種のうち、その半分にあたる28種が生息しているんです。種類が多い上に、もともと人のすぐ近くで暮らしてきた虫なので、街中に少しでも自然が残っていれば。今でも見ることができるんですよ」
ほほぅ、なるほど。
「ホタルは雄雌の両方が発光するもの、どちらかだけのもの、成虫になるとまったく発光しないものなどいろいろいますが、幼虫は全ての種が発光します。また、1~2年かけて大きくなり冬でも活動しています。さらに本島や宮古、八重山など島ごとに違った種のホタルがいるため、沖縄は一年中いろいろな場所で観察ができるホタルのメッカなんですよ」
なんとまぁ! 街中でホタルなんてイヤンバカンと思いながら調査を開始したのに…ねぇ? また、佐々木さんによると、本来なら八重山にしか生息していないオオシママドボタルが、本島南部で発見されており、おそらく人為的な理由だろうとのことでした。皆さん、いくらきれいだからといって持ち帰って放したりしてはいけませんよ! 島によって固有の種がいるからこそのメッカなんですからね!