沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1454]

  • (金)

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「島ネタCHOSA班」2013年02月14日[No.1454]号

県内限定のベーコン!?

 私は県外出身です。「ジョールベーコン」というベーコンが県内のスーパーでよく売られていますが、私の出身地では見たことがありません。沖縄だけのものだと思うのですがいかがでしょうか? また何の肉でどこの部位なんでしょうか?   (浦添市 Uさん)

県内限定のベーコン!?

 ええ!? 「ジョールベーコン」知らないんですか? 豚ですよ、ぶ・た! こんなこと言うのは失礼ですが、それはUさんの出身地域が珍しいんですよ。だって、あんなにおいしいのに! カリッカリに焼いて、トマトと一緒にマスタードをたっぷり塗ったパンで挟ん…はっ! すみません。こと「食」になるとついつい。では、気を取りなして本題に。まあ県内でハムやベーコンといえば、ここでしょう!

豚トロと同じ?

 やってきました。読谷村座喜味の沖縄ハム総合食品株式会社。対応してくれたのは企画部の大城尚美さん。では、まずジョールはどこの部位なんでしょうか?

 「クビの付け根のあたりです。最近、はやっている『豚トロ』はこのクビ肉の一部です」

 へぇ! そうだったんですか?実は、依頼者が「ジョールベーコンは沖縄にしかない」なんて言ってるんですが?

 「ええ。依頼者さんの言う通り、クビ肉は国内では県内でしか流通してないのですが、それも加工用です。一般的に『精肉』としての販売ではありません。スーパーなどではほとんどみかけないはずです」

 へ? いやいやいや、だって豚トロ…

 「ええ。豚トロは流通しています。ただ、県外では『クビ肉』は流通していないんです」

 え〜っと?? ますます…。

 「ごめんなさいね(笑)。まず豚肉の流通経路のお話をしましょうね。豚肉は、生産者から精肉業者に納入されます。そこで解体し、部位ごとに分けられて、私たち加工メーカーに届けられます。それから、部位によってはハムやソーセージに加工して、スーパーなどに卸されていくんです。生の状態の精肉と、ハムなどに加工された状態の2種類で流通しているんですよ」

 ふむふむ、それは分かります。

 「県外ではクビ肉は見栄えが良くないので中心部分のお肉だけ『豚トロ』として出荷して、残りはソーセージやハンバーグの材料になるんです」

 はっは〜ん。やっと分かりました。つまり、県外では「クビ肉」自体はスーパーで販売されていない。でも、手を加えてキレイにした中心部分だけは「豚トロ」として販売されている。それに対して、県内は「豚トロ」もあるし、部位全体の「クビ肉」も流通している。ただし、「クビ肉」は生ではなく、ベーコンに加工されてからで、それを「ジョールベーコン」というってことですね?

 「その通りです。ただし、あくまでも一般的にですよ」

 豚肉文化が影響

 了解しました。でも、なぜ、県内だけこの「ジョールベーコン」が一般的なんですか?

 「沖縄は、昔から豚は『鳴き声以外はすべて食べる』っていうでしょ? クビ肉も、ウチナーグチでは『クンチャマ(くびじり)』といって昔は精肉でも普通に売られていたんです。この食文化の違いもあって、県内ではクビ肉にクンチャマを残してカットするんですけど、県外ではウデ肉側の一部としてカットされてハンバーグやソーセージなどの原料にまわされているんですよ」

 なるほど。沖縄の豚肉文化が影響しているということですか。

 「はい。ちなみに『ジョール』というのはスペイン語で豚トロの意味です。向こうでもよく食べられているんですよ。いつごろ、誰が薫製にしたのかは分かりませんが、薫製することで味も香りも格段に良くなって本当においしいんです。ちゃんぷるーに使えばもう最高ですよ(笑)」 

 Uさん。すみません。確かに県内でしか流通してないものでした。でも、本当においしいので、一度、試してみてください。きっと、あなたも「クンチャマ」にはまりますよ!


県内限定のベーコン!?
大城尚美さん
県内限定のベーコン!?
見るからにジューシーな「ジョールベーコン」
県内限定のベーコン!?
カリカリに焼いて、ぱくりとどうぞ!
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