「島ネタCHOSA班」2013年03月20日[No.1459]号
ソテツの実で作られたみそのことは知っているのですが、他にもさまざまな食べ方があると聞きました。特にジューシーは空腹防止に良いと聞いたのですが、本当ですか? (那覇市 S・Mさん)
ソテツの実で空腹防止?
県内の庭園やグスクなどで見かける南国の植物・ソテツ。チクチクして痛そうですが、実は食べられるのでしょうか? 一体どんなお味なんでしょう。
早速、ソテツ料理を提供しているお店を探してみると、ありました! 那覇市久茂地の創業50年「居酒屋割烹ひさみ」。店主の玉寄貞夫さんに詳細を聞いてきました。
食糧難を救った植物!
ソテツの雑炊や料理があるのですか?
「はい、『タンナージューシー』といいます。創業から出しています。店ではソテツの実を粉にしたものと島薬草や魚介類のだしで炊き上げています。昔から粟国島の家庭の食卓に上る献立なんですよ」。他にも「そてつそば」、ナーベーラーや刺し身のそてつみそあえなど豊富なメニューがそろっています。
ソテツというと、飢饉(ききん)の際「ソテツ地獄」に陥ったように、そのまま食すと毒があり、調理法が難しい印象を持ってましたが、粟国島では日頃から食べているんですね。
「処理に手間が要ることは確かですね。しかしソテツは『一石百鳥』。一つとして無駄がなく生きる知恵が詰まっている貴重な植物。琉球王国時代の食糧難の際、特に離島はソテツに救われてきた歴史があります」
ソテツは厳しい環境に耐え、少しの土があれば育つ生命力の強い植物だそう。歴史的にみて飢饉対策にソテツを植栽させていたようです。
琉球王府行政機構図にみられるように、「蘇鉄(そてつ)方」という役職があり、ソテツは王府が管理していました。
「そう、粟国島のわれわれの先祖は、ソテツに生かされてきたんです。ソテツは捨てる部位がありません。茎からはくず餅がとれ、実はでんぷん質、実の殻は燃料やおもちゃに。葉は編み込んで皿や器になります」
豊かな土壌はなくても、ミネラル豊富な地層の粟国島では良質なソテツが育つようです。奥深い歴史背景を背負って、いざ実食!
「そてつ王国」どこに?
とろみがあり魚介系のだしのうまみが広がるコクのあるジューシー。ハンダマー、長命草、イーチョーバー、ドゥリンバなど薬草がたっぷり入っていて、後味はスッキリ爽やか。かなりの量があるにもかかわらず、ペロリ完食。特にソテツの実の味は感じられませんでしたが…
「調理するときに、かき混ぜて、練って練ってコクをだすんですよ。他の食材のうまみを引き出すんですね」。なるほど、納得の旨さです。
ソテツの実は、最低でも3〜4日、水にさらしてあくを抜きます。手をかけて処理をしたタンナーグゥ(ソテツの実粉)は、サラサラとかたくり粉以上に滑らかな白い粉でした。
近年、ソテツ自体が減少しているそうです。沖縄の文化の一つが途絶えないよう玉寄さんは「世界のそてつを守る会」の会長でもあるということ。さらに「そてつ王国」の大統領でもあるそうです。
玉寄さん、そてつ王国は一体どこにあるのでしょうか?
「私の実家の粟国島ですよ。ペンションとソテツの資料館が併設されてます。粟国島は上質なソテツが育つ島ですからね」
ソテツ文化を守るために活動している玉寄さん。ささやかながら一石を投じ続けているそうです。
タンナージューシーを食べた後、半日たっても空腹を覚えず…。やっぱり飢饉対策になるなにがしかが含まれているのではないのかと、ソテツの可能性に期待大な調査員でした。