「島ネタCHOSA班」2013年04月04日[No.1461]号
道路拡幅工事のためなのか、首里の龍潭(りゅうたん)の前にある旧県立博物館跡地の石垣の周りが掘り起こされています。町のシンボル的な存在に感じていたのですが、どうなってしまうのでしょうか?
(那覇市 H・Yさん)
石垣工事どうなってる?
調査員もよく龍潭通りを通りますよ。確かに工事をしてますね。旧県立博物館の場所は風格のある石垣に囲まれていますが、明治時代に首里城が明け渡され、それまで暮らしていた王族が移り住んだ中城御殿(世継ぎとなる中城王子の住居地)の跡地でもあったと聞いています。工事はどうなっているのでしょうか? 早速調査開始!
中城御殿の復元整備
県都市計画モノレール課公園緑地班の担当者の弓削田(ゆげた)祥平さんに電話で話を聞きました。
あの石垣は撤去してしまうのでしょうか?
「いいえ、根石(石垣の土台)は元の場所に残されるのですが、道路拡幅工事に伴い石垣を8mセットバックします。それにあたり現在、石垣周辺の遺構調査をしていますよ」
話によると、復帰20年を機に首里城公園整備の一環として、この石垣も復元されたとのこと。今後、中城御殿跡地も復元する方向で道路整備が始まりました。これを決定づけたのは、2010年度に発見された「中城御殿御普請板図」(1874年竣工当時の詳細な設計図)を写した古写真。世子が住んでいた屋敷跡の根拠のある資料が出てきたため、遺構保存が決定。将来的に復元整備を行うことが委員会の中で取り決められたそうです。
「調査後、石垣は一時的に外されますが、後方にさげて元通りに組み直します」
そうなんですね! 石垣はなくならず、22年には復元された中城御殿の姿が見られるのかも!? ほっと一安心した調査員。
また、整備するには遺構の詳細な調査が必要なため、県立埋蔵文化財センターが07年から発掘調査をしているとのこと。何か興味深い発見はないか、ワクワクしながら同センターへ行ってみました。
王子のトイレ発見
調査班長の金城亀信さんと主任専門員の仲座久宣さんに聞いてみました。どのように発掘調査しているのですか?
「復元にむけた遺構調査をするにあたり、古老の聞き取りや、古い文献をさまざまな角度からアプローチしていきます。トレンチ(溝)を掘って遺構の範囲を調査していきます」
中城御殿跡地から何か出土しましたか?
「国内でも希少な英国製の皿や高級陶磁器の破片など多く出土してます。10年度調査時には、新御殿(ミーウドゥン)という世継ぎの居住地帯が大変良好な状態で見つかり、トイレがでてきました」
王子様の御トイレですか!
「はい、染め付け角形大便器と薄緑色の青磁製の朝顔型の小便器の破片が出土したんです。トイレにあたる土を分析したところ、寄生虫の卵などが確認されたのでトイレと断定されました。また、世子やその親族、そこに仕える女官らが生活する場である御内原(ウーチバラ)から上之御殿に続く琉球石灰岩の階段が完全な形ででてきました。ここはそれまでは存在さえも知られていなかったのですよ」
お〜、ものすごい発見ですね。 さらには排水溝出口付近でブリキ缶の中に隠された漆器製位牌が出てきたそうです。金箔が施された日輪と鳳凰の模様があるので王族女性のものらしいですが、赤外線で調べても名前の一部だけ確認され、誰のものか判断がつかないとのこと。その他、歯ブラシやマドガイなど生活用品・建材も出土しているそうです。
発掘物から見える当時の生活には、琉球独自の文化的技術の素晴らしさが伺えました。ぜひ技術ともども復元された中城御殿を形として見てみたいものですね。