「島ネタCHOSA班」2013年07月18日[No.1476]号
昨年、伊計島で行われたアート展がことしも開催されるということで楽しみにしています。展示の中で、妙にリアルなおばあちゃんの像があったのですが、どういう経緯で作られたか教えてください。
(那覇市 Tさん)
リアルなオバーの正体は?
正式には「島アートプロジェクト事業〜イチハナリアートプロジェクト」と名付けられたこの事業。早速、うるま市与那城伊計の伊計島で市観光物産協会の池上俊博さんと市経済部商工観光課の仲本佑也さんに話を聞きました。 「昨年は、伊計島にとって寂しい出来事が続きまして、どうにか島の雰囲気を明るくしたいと計画されたんですよ」と、仲本さん。2012年2月に大型リゾート施設が閉館。3月には伊計小中学校も閉校して島を訪れる人が減り、学校に子どもたちの声が響かなくなりました。地域を元気にしようと新しい島興しを模索した結果、県内外の若手芸術家、美術家、地元住民が一体となってアートによる地域活性化事業に取り組むことになったのだそうです。 「企画の中心になったのは、うるま市出身で熊本大学教授の美術教育研究者・喜久山悟さんです」。日本こうさく学研究会会長も務める喜久山さんの呼びかけで国内外で活躍するアーティスト15人が学校や島のあちこちに作品を展示。昨年は10日間で3000人を超える人が島を訪れ、鑑賞を楽しみました。
思わず声掛ける人も
気になるおばあちゃんに会いたいのですが…とはやる調査員を旧伊計小中学校へ案内してくれた二人。人けのない教室に大小さまざまな作品が梱包(こんぽう)されて置かれています。「作者は金沢大学教授の江藤望さんなんですけどね」と、段ボールの一つをおもむろに開けた池上さんと仲本さん。中からは! 小さな木製の椅子に腰掛けた女性が現れました。頭には「与那城」と書かれた手拭い、足元はしまぞうり、花柄のかわいらしい開襟シャツを着ています。
「名前は東江ツルさん、85歳です」と二人が擬人化するものだから、ますます生きているように見えてきます。「箱から出しておくとオバーが一人でうずくまっているって通報されるんじゃないかと心配で、しまってあるんですよ」と池上さん。役場に「連れて行った」際、女性職員が「おばあちゃん、今日はどうしたの?」と声を掛けたというエピソードも。
ところで、オバーは実在するんでしょうか? 「2、3人のモデルのミックスかと言われてたんですけど、確認したところ、さまざまな沖縄の風景写真などの資料におばあさんが写っていて、そこで沖縄のイメージを膨らませて制作されたそうですよ」と池上さん。写真からこんなリアルな立体像に! なんだか拝みたくなってきました。
県内各地をPR行脚
「ツルさんには、もう一つ大事な役割があるんですよ」と仲本さん。聞くと、PRのために一緒に県内各地にお出掛けしているというのです。「『オバーキャラバン』といって、県内各地の観光地に行っていろいろな人と交流している様子を写真とビデオで記録して市をPRしているんです」。地元の人はもちろん、観光に訪れる人たちも伊計島を訪れてほしいという願いを込めて、県内各地を回っているそうです。
「ツルさん、忙しいですね」と心配する調査員に、「多くの人がツルさんに会えるよう、ことしはバージョンが増えました。開催期間中あちこちで待っていますよ」と笑顔の仲本さん。いやー、やっぱり沖縄のオバーは元気ですね。あれっ? つい調査員も話し掛けてしまいました。
「イチハナリ〜」は、8月3日(土)から9月1日(日)まで開催。のどかな島が21人のアーティストの作品で彩られます。ぜひ多くの人が訪れてほしいと願う調査員なのでした。