「島ネタCHOSA班」2013年08月01日[No.1478]号
先日、座間味島に行った時、海に浮かぶ筏(いかだ)を見かけ、何の養殖か尋ねたところ、「真珠らしい」と聞きました。慶良間諸島でも真珠がとれるのですか? どんな真珠なのか興味津々です。
(宜野湾市 B・Kさん)
慶良間でも真珠を養殖!?
沖縄で真珠養殖といえば、世界で初めて黒真珠の養殖に成功した石垣市川平湾が有名ですが、慶良間諸島でも採れるのですね!?あの慶良間の美しい海で採れる真珠といったら、どんなものなんでしょう。ぜひ見てみたい! と思った調査員。早速調べてみると座間味島で真珠の養殖をしている会社を発見しました!
22年手塩にかけて
びゅーんと海を渡りたいところでしたが…。今回は電話で座間味村阿佐のけらま真珠の代表・市村陽二さんに話を聞きました。
座間味島で真珠作りをしているとは知りませんでしたが、いつ始めたのですか?
「沖縄で養殖することを決めて1989年から仕込みを始め、実際には22年ほどになります」
ほとんど四半世紀ですね! なぜ沖縄で?
「もともと九州でアコヤ貝真珠を養殖する会社に勤めていたのですが、『自分で黒真珠を作る』という夢を実現するために、フィリピンなど世界中で最適な場所を探しました。黒真珠は南の海でないとできないんですよ。しかし真珠の養殖は日本人が考え出したものなので、やはり国内が良いと思い、沖縄か小笠原に絞りました。そして、きれいな海、人里離れた静かな入江のある場所、ここ座間味島の阿護の浦にたどり着いたんです」
なるほど。阿護の浦は、昔からの天然の良港で、波がなく、夜は水面に星が映るほど静かだといわれています。琉球王朝時代から唐船が待機した港として知られ、現在は国際避難港とされているそうです。
「もともと座間味に天然の黒蝶貝がいるので、その卵を採取し、ふ化させて育てることから始め、品種改良を重ねてきました。稚貝が真珠を作り出す母貝になるまでに3〜4年かかるので、気長に20年計画で黒真珠作りに取り組みました」と、語ります。
真珠は、貝殻成分を分泌する外套(がいとう)膜が貝の体内に入り込むことで生成されます。人工的に球体の核を埋め込んで生成する一般的な「真円真珠」と、自然のまま核なしで生成する「天然真珠(ケシパール)」があるとのこと。
市村さんは養殖に携わる中、慶良間の海は美しいが故に海の栄養分が乏しく、量産化が難しいことが分かりました。そこで、「種貝を卵から育て、ゆっくり時間をかけて慶良間の海に委ねて育み、見守る」スタンスにシフトしたそうです。
「よそでは類がないのですが、うちの真珠はすべての工程を地元、慶良間で完結できるようになっているんですよ。通常1年のところを5年かけて海で育てた天然真珠は品質が良く、100年モノです。少量で自然が作るがまま、出てくるまでわからないんですが(笑)」と市村さん。
市村さんの作る真珠「ケラマパール」は、ほとんどが天然真珠。米粒大の小さなものから、形も大きさも色合いもさまざまだそうです。まさに自然が作り出す造形美。本当にぜいたくな手作り真珠ですね。寛大に見守る市村さんが、真珠たちのお父さんに思えてきました。
表情豊かな彩り
ぜひ本物のケラマパールを見たいと思い、市村さんに南城市知念の「atelier Chinen*Chinen」を紹介してもらいました。ジュエリーデザイナーの今井宏治さんはケラマパールに出合い、沖縄に移住。今年、工房をオープンしました。多彩なパールが施されたサンゴのかけらなど、沖縄の自然がモチーフとなった銀鋳造の素敵な作品ばかり。ケラマパールを見せてもらうとなんともかわいらしい。その魅力を尋ねると、「タヒチの黒真珠とは異なり、淡いグレーのグラデーションは座間味にしかない彩り。とても表情豊かです。好きなものを選び、好きな形に作る手作りアクセサリーに真珠の育った海、作り手の顔が見える宝石を使うことができるというのが大変新鮮です」と話しました。
携わる人々の思いがつながっていく生きた物作りが展開されているように感じた調査員でした。