「島ネタCHOSA班」2013年08月22日[No.1481]号
先日、近所の祭りのアトラクションで「那覇市のローカルヒーロー・ムムヌチハンター」という集団が出て、演技や踊りを披露していました。彼らのことを教えてください。
(那覇市 Sさん)
地元ヒーローが熱い!?
写真を見ると、各地域で人気の「ゆるキャラ」とは雰囲気が違いますね。早速「プロダクション」の那覇市役所へ。対応したのは、商工農水課の上原堅次郎さん。名刺にはプロジェクト未来なはムムヌチハンタープロジェクト担当とあります。
「正式には『美(ちゅ)ら結シンカ ムムヌチハンター』といいます」。「美ら結シンカ=誰かを思いやる心を持つ仲間」、「ムムヌチハンター=旗頭の伝統的な衣装・股抜半套(むむぬちはんたー)」の意味だそうです。
「市と市教育委員会が、若者を元気にしたいという取り組みで『誰でもヒーローになれる』をコンセプトに生まれたローカルヒーローなんですよ」。2010年、市の地域福祉資金を基に企画され、真和志高校の生徒がキャラクターイメージを構築。ヒーローを演じるメンバー、音響担当、サポーターは小学生から大学生までの劇団経験者など15人で構成。那覇商業高校の生徒がアイスなどのコラボレーション商品を開発するなど、大人目線の「健全育成」より一歩進んで、若者が自発的に活動しています。
「ことしの2月には、『絆ヒーローズ大戦インなは』と題して、復興支援を目的に福島県と山形県のローカルヒーローとショーも行いました。県内外に活動の幅が広がってきたのは、彼らの努力のたまものなんです」。えーっ、ヒーローがどんな努力をしているんですか?
毎週修行に励む
彼らが毎週火曜日に集まる那覇市牧志のほしぞら公民館にお邪魔しました。ホールにはマットが敷かれています。2代目リーダーの玉代勢仁さんの掛け声に合わせ、縄跳びが始まりました。次に柔軟体操をするメンバーを「体軟らかいなー」と見守っていると、練習はだんだんとハードなものに。素手でのパンチ、ハイ・ローキックなどの格闘技系が飛び出したと思えば、側転、バク転、宙返りなどのアクロバット系も。それぞれ習熟度は違いますが、みんな真剣です。
「本番で敵と戦う時、殴り合ったりするわけではないんですが、アクションは間合いが大事。日々の基礎訓練が大事なんです」と、次期リーダーの知念由樹さんは話します。しぐさを大きく見せ、芝居をより魅力的にするには、体の切れ、柔軟性、敏しょう性などヒーローだからこそ求められることがあるそう。舞台上で激しい動きをするため、体が鈍ったり気が緩んだりすると、時にけがにつながる恐れも。そのためのヒーロー修行に励んでいるわけですね。
敵は身近にいる
ところで、ヒーローということは悪役は…? あっ、いました。恐る恐る名前を聞くと「フユー大帝」と「クードンチュ」。どんな敵なんでしょう?
「僕らムムヌチ〜は5人いて、それぞれ沖縄の文化や伝統芸能などにちなんだ名前が付いています」。リーダー格のムムヌチレッド、ハーリーブラック、エイサーブルー、ウフジシ(大獅子)ブラウン、ウフンナ(大綱)イエロー。「悪役のフユーは怠惰と無関心、クードンチュは空洞な人の意味で合わせてクードーカーです。僕たち若者が自分で自分のことをする、自分で考える心をアクションを通じて伝えていきたいんです」と熱く語る玉代勢さん。
「ショーの最後にレッドが言うせりふがあります」と知念さんが教えてくれた言葉。「皆さんは一人じゃない。誰かが皆さんのことを見てくれているはずです。だから、俺たちと共にクードーカーに立ち向かおうぜ!」
かっこいいぜ! ムムヌチハンター! すっかりファンになってしまった調査員。彼らの熱い気持ちが全県に広がるといいなと心から思うのでした。