「島ネタCHOSA班」2014年01月23日[No.1502]号
毎朝、那覇市の金城ダム横の道を通っているのですが、最近、湖面が緑一色に覆い尽くされているのが気になっています。芝生みたいできれいですが、お魚などに影響はないのでしょうか?(南風原町のちょんこめさん)
金城ダムが一面の緑に!?
ダムの湖面が緑!? 2013年12月に届いた一通のメールに半信半疑の調査員。まずは現場の金城ダムへ直行します。
すると、調査員の目の前に広がっていたのは…。本当に芝生のような一面の緑、緑、緑! 知らない人が見たら、ここがダム湖だとは思わないかもしれません。いったい何事!?
事態を見極めるため、遊歩道に沿って水面に近づいてみます。間近で見ると、一面の緑の正体は、なんと、水の上に浮かぶ植物。レタスにも似た水草が、湖面をびっしり覆い尽くしていたのです。
ボタンウキクサの脅威
ダムの詰め所で作業していたおじさんに尋ねると、これは「ボタンウキクサ」という名前の水草で、前々から少しずつ広がっていたのが、昨年12月に入ってダム一面を覆い尽くすまでに広がったそう。なんと恐ろしい…。
名前が分かったところで過去の新聞記事を調べてみると、金城ダムでは03年にもボタンウキクサが大量発生。02年には長浜ダム、06年には大宜味村喜如嘉の水田でも繁茂するなど、県内でしばしば問題になっていることが分かりました。
この繁殖力旺盛な水草についてもっと知るため、環境省那覇自然環境事務所の篠崎さえかさんにお話を聞きました。
「ボタンウキクサは、南アフリカ原産の植物です。沖縄には大正末から昭和初期にかけて鑑賞用として持ち込まれたようですね。昔はホームセンターでも売られていたのですが、近年、沖縄だけでなく、琵琶湖など西日本でも異常な繁殖による被害が出るようになり、法律で栽培や輸入、販売等が禁止される特定外来生物に指定されました」
実際にはどのような悪影響があるのでしょうか?
「ボタンウキクサは湖面一面を隙間なく覆うので、水中の酸素や光が不足し、水質が低下します。そのため、もともとそこにいた動植物が生きられなくなってしまうんです」
ええっ、それは大変! 魚も息ができなくなりますね。
「さらに、水田や用水路に流出すると、農作物にも被害が出るという問題もありますね」
困難な除去作業
急速な勢いで水面を覆ってしまうボタンウキクサ。金城ダムでも、除去作業に追われていました。
「いつもは貯水池の周辺の水草を職員が取り除いて繁殖を抑えています。しかし、昨年9月以降、原因ははっきり分からないのですが急激に増えてしまい、金城ダム管理所常駐の職員2人だけでは間に合わなくなってしまいました」と県ダム事務所の花城治さんも頭を抱えます。
「県のダム事務所でも、職員7〜8人を集めて、何度か一日がかりで手作業による除去を行っています。一時的に水面の一部が見えるようになったりもしますが、繁殖力が強すぎて、一週間後にはまた元に戻ってしまうんですよ」
うーん、まさにいたちごっこというわけですね。
「ボートや網を使った手作業では、どんなに頑張っても追いつかないので、1月中旬から機械を使って除去作業を進める計画を立てています。機械でごっそり取り除いた後は、人力で管理できるようにしていきたいと思っています」
ボタンウキクサは一度広がると根絶が難しく、根絶するには何度も繰り返し除去作業が必要になってくるそう。
もともと沖縄にはなかったボタンウキクサが広まったのは、個人の水槽や庭池で育てられていたものが流出したため。半ば人災という面もあります。ボタンウキクサはもちろん、今後、同じような道をたどる植物や動物が現れないよう、珍しい動植物を持ち込むさいには、くれぐれも慎重にお願いします!