「島ネタCHOSA班」2014年04月03日[No.1512]号
先日、那覇空港を利用した時に県外へ持ち出し禁止の害虫を紹介するための虫の巨大模型を見ました。すごくリアルで気持ち悪かったです。誰が作っているんですかね?(浦添市、桃ミミさん)
那覇空港に巨大害虫!?
県外に持ち出し禁止というと紅イモが思い浮かびます。寄生する虫が本土にいないため、生息地の拡大を防ぐために持ち出せないんですよね。もっと知りたくなってきました。調べなくては!
植物の持ち出しなどを監視している那覇市の農林水産省那覇植物防疫事務所を訪ねました。対応してくれたのは、統括植物検疫官の渡久地章男さん、次席植物検疫官の池城隆明さん、調整指導官の川下貴さんです。
広報の強い味方
沖縄の害虫を教えてください。
「沖縄にはアリモドキゾウムシ、イモゾウムシ、アフリカマイマイ、ミカンキジラミなど5種類の病害虫がいて、本土への移動を禁止されている植物があるんです」と渡久地さん。
なるほど。ところで、那覇空港に害虫の巨大な模型があると聞いたのですが?
「はい。植物検疫について知ってもらうために、那覇空港内にある検疫カウンターで拡大した害虫の模型を展示しています。他にも産業まつりなどのイベントにも出していますよ」。
池城さんも「以前は検疫カウンターに来てくれる人がほとんどいませんでした。たまにゲートの場所を聞かれる案内係のようでしたよ。でもある時、アフリカマイマイの殻を置いたら反応が良かったんです。そこで2年ほど前から模型を展示しました」と説明してくれました。
巨大模型は目を引きますが、中には「こんな大きな虫がいるんだ。さすが沖縄」と勘違いする観光客もいたそうです。そこで実物の標本も一緒に展示。数㎜の虫を見ると「こんなに小さいから植物を持ち出せないんですね」と話が進むそうです。
「子どもが模型に興味を示すと親も一緒に見てくれることが分かりました。やっと本来の仕事ができるようになりました」と脱案内係を喜ぶ池城さん。
皆さんがそろって「リアル」と言う害虫模型は、今では東京の農水省のイベントにも出張するほど人気に。この日も研修で出払っているとのことでした。
これはぜひ模型を見たいですね。では空港へ出発! しかし植物検疫カウンターは手荷物検査を通過した所にあり、航空券がないと入れないとのこと。残念! ! ならば模型を作った人を訪ねましょう!
20㎝のゾウムシ
作っているのは南風原町に工房を持つ「ひつじ工芸舎」の永尾陽祐さんと山内香さん。実は、木製のおもちゃや家具を専門とする木工作家なのです。しかし、なぜ害虫模型を?
「那覇植物防疫事務所の知人に声を掛けられたんです。一つ作ったら評判が良くて正式に発注を受けました」と永尾さん。
そういう経緯があったんですね。では模型を拝見! 20㎝ほどの黄土色の物体が…。これはイモゾウムシですね?
「はい。いろいろな角度から撮った写真や実物を見ながら作ります。ワイヤで骨組を作り、その上から何種類かの粘土を乗せていきます。大変なのは毛ですね。1本1本植えるのですが、針金だといかにもニセモノのようなので、つけまつげをバラしたり、飼い犬の抜け毛を洗ったりして使いますよ。4体作るのに1カ月半ほど掛ります」
確かに、背中には細かい毛が生えています。気持悪い〜!
永尾さんは「私も虫嫌いで最初は作りながらオェッてなってました。でも今は周囲から気持悪い、怖いと言われるとうれしくなりますね」と話します。
他にも、アリモドキゾウムシ、アフリカマイマイ、ミカンキジラミ、ミカンコミバエを作っているそうです。何と、今、制作中のものは鹿児島県からの注文。二人の作った害虫模型が県外に羽ばたいていくのです。「今後も人の役に立つ物を作っていきたい」と二人は語ってくれました。
今回、気持ち悪い巨大模型が害虫の拡大を防ぐのに一役かっていると知った調査員。皆さんもぜひ、那覇空港を利用した際は、植物検疫カウンターで観察してみてください。
(提供・ひつじ工芸舎)