「島ネタCHOSA班」2014年09月25日[No.1537]号
沖縄で酢といえば「まるこめ酢」だと思うのですが、なぜ沖縄で人気があるのか、気になって仕方がありません。また、なぜ刺し身を食べる時に使うのかも気になります。ぜひ調査をお願いします。
(地元40歳さん)
酢といえば「まるこめ」?
「まるこめ」ってみその坊やではなく、酢の方ですね。確かに、食堂にもボトルごと置いてある所多いですね。
ほとんどが沖縄へ
動向を探るべく、2カ所の店舗を訪ねました。まずは県内で60店舗を展開するタウンプラザかねひでの壺川店。フロア主任の細原研司さんは、「売り上げは、他社商品全体の5倍以上です。購入されるお客さまは、年齢層が高めですね」と話します。
一方、12店舗を展開する那覇市の泉崎りうぼう。企画室の上原貴子さんは、「うちでは、基本的には置いていないんです」と意外な答え。「ニーズが高いこと、確実に売れることは分かっているんです。ただ、原材料名の表示方法が…」
表示されている含有成分が多い順に並んでいないと分かり、メーカーに書き替えをお願い中だそうです。
それでも要望が強く、旧盆期間だけ並べたそうですが、あっという間に売り切れに。販売を見合わせた際、ボトルの形状がそっくりな「マルタ」という商品を並べたものの、売れなかったそうです。カンナジ(必ず)! ジェッタイ(絶対)! まるこめなんですね。
ネット上では沖縄の調味料として売られていますが、おや? 鹿児島で作られているようですよ。
まるこめ酢の製造元、鹿児島県出水市の株式会社マグマへ問い合わせました。対応した岡本さつきさんは、「今、社長が療養中で詳しい経緯は分からないんですよ…」とのこと。ただ同社では、まるこめ酢だけを製造しており、95%以上を沖縄へ出荷しているそう。
ネット上で「沖縄の〜」などとして販売されていることについては、「沖縄の方が好んで育ててくれたので、うれしいことですよ」と話してくれました。
選択肢ない時代も
なぜ、ウチナーンチュはまるこめ酢を好む? 那覇市泉崎の松本料理学院学院長の松本嘉代子さんを訪ねました。
「酢は、穀物酢、醸造酢、調理酢など材料や製法によって分類されます」。これらは米やフルーツを使い、自然界にある酢酸菌の働きで醸成します。
「対してまるこめ酢は、『合成酢』。石油を原料にしたエチレンから作られます」
えっー? それは衝撃。
「私も詳しい理由は分からないんですけど、50年ほど前はね、沖縄には合成酢しかなかったのよ。比較のしようがないから、沖縄の人はこれがお酢だと思っていたんでしょうね」
松本さんによれば、お酢には殺菌効果があると年配の人は思っていて、生ものにかける使い方が好まれたのではないか、とのこと。なるほど、それで魚やヒージャーの刺し身にかけて食べているんですね。
「食は、習慣ですよね。合成酢は、穀物酢などに比べて酸味と香りが非常に強い。舌が覚えて、それが受け継がれていったんでしょうね」
松本さんは1969年に学院を開設する際、卸業者や県外のメーカーを当たり、合成酢以外の酢を独自のルートで入手していたそうです。
「食は積み重ね。私は、授業や講習会などにも酢を積極的に取り入れて、違いを皆さんに説明しました。『どちらがいいですか?』と繰り返し聞いたんです」
選択肢がない時期を過ごしたウチナーンチュに、頭ごなしに「駄目」というのではなく、食べてもらうことを繰り返したところ、少しずつ「まろやかでおいしい」「喉に刺激が少ないから使いやすい」「体にも良い」などの声が聞かれるようになったそうです。
今はいろいろな種類が選べる時代。「やさしい〜」なんていう商品もありますね。長年「まるこめ」に親しんだ人も、一度他の酢を試してみては?と思った調査員でした。