「島ネタCHOSA班」2014年10月30日[No.1542]号
沖縄には、県外には珍しい左巻きのカタツムリがいると聞きましたが、どこで見られますか? また、左巻きが多い理由は何でしょうか?
左巻きカタツムリの謎!?
えっ、カタツムリに右巻きと左巻き? カタツムリの世界にも、「右利き」と「左利き」があるのでしょうか?
一部の離島に生息
というわけで、琉球列島の自然について分かりやすく解説してくれる沖縄生物倶楽部の佐藤寛之さんを訪ねました。カタツムリには右巻きと左巻きがあるんですか?
「はい。人間の体を考えてみてください。心臓の位置は少し左側ですよね? 生き物の体は必ずしも左右対称ではなく、偏りが見られるケースがあるんです。カタツムリの場合、正面から殻を見て、口が右に開いていれば右巻き、左なら左巻きになります」
人間に右利きの人が多いように、カタツムリも右巻きが多いのでしょうか?
「そうですね。左巻きは、ごく大まかにいって全体の10%ぐらいでしょうか」
左巻きは少数派なんですね。
「大型のカタツムリに限っていえば、左巻きのタイプは東南アジア地域で多く見られます。本土にもいないわけではないですが、それほど目立たないですね」
沖縄には左巻きのカタツムリがたくさんいるんですか?
「県内でも地域が限られ、久米島、石垣島、西表島に生息しています。これらの離島では、わりと普通に見られますよ」
へぇ〜、一部の離島だけなんですか。ますます興味深いです! でも一体なぜ!?
「実は、その理由を詳しく研究した人がいるんです。紹介しましょうか?」
ぜひ教えてください!!
鍵握る「右利きのヘビ」
その人とは、京都大学白眉センターで特定助教を務める細将貴(ほそ・まさき)さん。さっそく電話をしてみました。
どうして左巻きのカタツムリは珍しいのですか?
「右巻きから左巻きに進化することがまれなので少ないと考えられます」
細さんによれば、右巻きが多数派のカタツムリの世界では、突然変異で左巻きの個体が生まれることはあっても、子孫を残すことは難しいそう。
「というのも、右巻きは右巻き、左巻きは左巻きのカタツムリ同士でしか繁殖ができません。数が少ない左巻きの個体同士が出合う確率は非常に低いので、なかなか次の世代を残せないんですよ」
でも、それならなぜ一部の離島に左巻きのカタツムリが多く見られるのでしょうか? 謎の鍵はあるヘビが握っている、と細さんは話します。
「実は、石垣島と西表島には、カタツムリばかり食べるイワサキセダカヘビというヘビがいます。『右利きのヘビ』とも呼ばれる生き物で、歯の数が左右で違っており、右巻きのカタツムリを食べるのに都合がいいように特殊化しているんです」
ということは―。左巻きのカタツムリは、このヘビに襲われても逃げることができるんですね!
「はい。そのため、まれにしか起こらない左巻きカタツムリの進化が促進され、石垣島や西表島にはその名残として今も左巻きのカタツムリが分布していると考えられています」
実際、イワサキセダカヘビの分布範囲は、左巻きのカタツムリの生息地域と重なっているとか。
ただ、久米島だけは例外のようですが、昔はいたと思われるイワサキセダカヘビの仲間が、何らかの理由で絶滅してしまったのではないかとのこと。うーん、面白〜い!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇沖縄の生き物にはまだまだ不思議がいっぱい。これからも、どんな謎が解き明かされていくのか楽しみです!!
(写真提供:細将貴さん)