「島ネタCHOSA班」2015年1月1日[No.1550]号
正月用のしめ縄は本土産だと思ったんですが、沖縄でも作っているところがあると聞きました。本当なのか気になるので調べてみてください
沖縄産のしめ飾り!?
稲作農家の少ない沖縄では、材料になるわらを確保するのも難しいはずですよね。本当に県産しめ縄があるのか、まずは数社の大手スーパーに問い合わせてみました。
すると、すべての店舗で「県外産と県産、両方取り扱っていますよ」との答え。
「本来、しめ縄は聖地と俗世を区切るためのもの。正月用には縁起物の飾りをいろいろつけますので、一般的にはしめ縄ではなく、しめ飾りと呼ばれています」
なるほど、勉強になります。さらに、「沖縄には、しめ飾りだけを専門に作っている会社がありますよ」と、驚く情報もいただき、場所を教えてもらいさっそく訪ねてみました。
すべて手作業で仕上げる
正月用しめ飾りの専門店の池間商店は西原町にありました。にこやかに迎えてくれた社長さんはなんと、宮古島なまりのラジオパーソナリティーとしても有名な池間校長ならぬ池間〝好調〟こと池間弘さんでした。今回の取材は驚くことばかりです。
「よく来たねー。はい、刺身食べなさい」
ラジオでおなじみの温かい声で、いきなり料理を勧める池間さん。いや、うれしいですけど、まずは取材をと、さっそく作業場へ案内してもらいました。そこには1メートルを超えるわらの束が並び、そばには黄金色の実が美しい稲穂も用意されています。
「本体を作るわらは、中国から輸入している真菰(まこも)。畳表に使われています。今は国産のわらは機械で収穫されるため短くなっていて、大きいサイズのしめ飾りが作れない。そのため、長いものを中国から取り寄せています。飾りに使う稲穂は、京都の農家さんから送ってもらっています」
しめ飾り作りはすべて手作業。長わらをよって本体を作り、それに稲穂が実る垂れわらを3本巻き付けます。次に紅白の御幣や造花、沖縄らしいシーサーの飾りなどをつけて出来上がりです。池間商店では年間約3万個を製作し、全県に出荷しているそうです。
青いわらにこだわる
池間さんがしめ飾り作りを始めたのは1989年から。脱サラを機に和歌山の業者に3年通って特訓したそうです。
「兄が大阪でしめ飾り作りに携わっていたからね。沖縄で本格的に始めようと思ったんです。それから27年間、これ一本でやっている」
縁起物のしめ飾りは、本来長いわらを束ねて作るもの。近年は短いわらをつないで作る方法もあるようですが、池間さんは長わらにこだわります。また、乾燥させて枯れ色になったひねわらは使いません。
「年始に神様を招く飾りだから、若々しい色がいいよね」
材料にこだわり、それを貯蔵するコンテナも選び抜き、常に除湿機をかけて色や香りが落ちないよう配慮しているそうです。また、商品を納品する際には、すべて箱に入れ、しめ飾りが地面にじか置きされないように気を配っています。
「一年の始めに神様をお招きする神聖な縁起物だから、お客様の手に渡るまで丁寧に扱ってもらいたいわけ」
「新しい1年も、皆様にとっていい年になりますように」と願いを込めた県産しめ飾りには、作り手のやさしい思いが込められていました。