「島ネタCHOSA班」2015年5月30日[No.1567]号
海の好きな友人が世界で沖縄の海にしか生息しない「クビレミドロ」という絶滅危惧種がいると言っていました。どんな生き物なのでしょうか。そのほかにも、珍しい生物について知りたいです。調べてください。
(元ボーイスカウト・20代男性)
藻にくびれ!?
「クビレミドロ」。名前からしてミステリアス。新聞記事や生物図鑑から調べてみると干潟の生き物と分かりました。それも意外に沖縄市の泡瀬干潟に生息する、絶滅危惧種だそうです。早速、クビレミドロとその他の絶滅危惧種の話を聞くため、泡瀬干潟の生物の観察を続けるウミエラ館の館長、屋良朝敏(あさとし)さんを訪ねました。
マリモに似たかわいい藻
クビレミドロとはどういう生物ですか?
「クビレミドロは、絶滅危惧種I類という最も絶滅が懸念されている位置付けにあります。地面に張り付いていて、冬になったら芽を出して2〜3㌢ほどに成長します。藻類であり、顕微鏡で見ると一本一本の藻にくびれがあることからこの名前が付けられました」
かなり絶滅が心配されているのですね。世界ではどこに生息していますか?
「それが、世界でもこの泡瀬干潟とうるま市の勝連、恩納村大田の地域だけなんです。終戦直後、海岸線が残っていた時期は那覇の若狭海岸を含めた県全体に生息していたのですが、今は先述の3カ所だけです。藻の種類では黄緑藻に分類されるのですが、この黄緑藻の海産種はごくわずかです。学術的にも藻類の進化の過程を探る上で貴重な種なんです」
えっ! 世界でも沖縄だけですか。研究対象としても有益な種なのですね。
「そうですね、見た目もマリモに似てポコポコポコ〜としていてかわいいですよ」
屋良さん、そのポコポコポコ〜と言う表現もかわいらしいですよ!
新種のクモも、稀少なハゼも!
この他にも泡瀬干潟には貴重な生物がいそうですね。
「干潟は潮の満干で海と陸地の両方になる環境で生物多様性が高いのが特徴です。
当館の名称にもなっている『ウミエラ』はサンゴの一種で鉛筆くらいの大きさです。泡瀬干潟にいるウミエラは歩いて行ける浅瀬にあるのが珍しく、干潮時には完全に露出します。見た目はスマートでとっても神秘的です。海岸から約2㌔の手付かずの自然が残る所に生息していますよ。
『アワセイソタナグモ』という水中に生息する新種のクモもいるんです。満潮の時には石ころの裏に糸を張って空気の残る巣を作って暮らしています。石ころ一つが彼らの世界なんですね。
『トカゲハゼ』ももう泡瀬干潟では20匹前後しかいないとされていますね。背ビレが長くて細長く、帆柱のような見た目です。かつてウチナーンチュは『フータテトントンミー(帆を立てたハゼ)』と言って親しんできました。中国大陸にも生息していることが確認されているため、その存在により大陸と地続きだったことが証明されているんです」
なるほど、地質学の研究にも貢献していたりするのですね。思っていた以上に興味深い…。
生物多様性が日本一
泡瀬干潟では近年で10種の新種が見つかっているとのこと。それだけ他に類をみない環境だということですね。
「泡瀬干潟では、貴重な生物が残された環境の中で頑張って生きています。干潟として珍しい地形で、もともと黒土なので全体も黒っぽく見えますが、環境はとても美しいんですよ。生物多様性が日本一の泡瀬干潟は観光資源になり得ると思っています。世界中にないものがここにあることに誇りを感じながら足元の宝を大切にしていきたいですよね」
ラムサール条約級の自然が残る泡瀬干潟の生き物も目を向けると、これまでと違う風景が見えてくるかも知れませんね。
上記3点写真提供・泡瀬干潟を守る連絡会
写真提供・下謝名松榮氏(日本蜘蛛学会名誉会員)