「島ネタCHOSA班」2015年12月03日[No.1598]号
もういくつ寝るとクリスマス♪ ところで、「海のクリスマスツリー」ってご存じですか? とてもカラフルで美しいそうなんです。詳しく調べてください!!
(宜野湾市 赤鼻の渡名喜さん)
海のクリスマスツリー!?
海のクリスマスツリー!?
すごくロマンチックです。これは、ぜひ調べてみなければ!!
海藻ではない!?
まずは、インターネットで検索です。「海のクリスマスツリー」という言葉を手がかりに調べてみると…。おおっ! 青い海の中、サンゴの上に、小さなツリーを思わせる物体が生えている画像が見つかりました。
拡大した画像を見ると、モミの木に似たきれいな円錐形が印象的です。葉を思わせるギザギザの形もくっきり。まさにミニチュアのツリー! さらに、緑、黄、赤など、色もさまざま。見ているとウキウキした気分に♪
名前は「イバラカンザシ」。調査員は琉球大学理学部海洋自然科学科にコンタクトを取り、イバラカンザシをテーマに卒業論文を仕上げたという金井恵さんを紹介してもらいました。
金井さんは北海道出身。沖縄の海にあこがれ琉球大学に進学し、卒業後は一般財団法人 沖縄県環境科学センターの職員として海洋環境の調査に日々駆け回る筋金入りのマリンガールです。
さっそくですが、イバラカンザシはどんな場所に生息しているんですか?
「イバラカンザシは、生きたサンゴを住み家に生きている生物です。沖縄に限らず分布していますが、ハマサンゴが豊富な沖縄島周辺では、一般的に見られますよ」
沖縄の海にこんな美しい生物が数多くいるなんて、うれしいですね。ところで、イバラカンザシは、海藻か何かの仲間なんですか?
「いえ、違います。多毛綱ケヤリムシ目カンザシゴカイ科の動物です。光合成は行わず、プランクトンを捕食して生きています」
ええーーーっ!? こ、これ、動物なんですか?
驚きの生態
意外な事実に驚く調査員に、金井さんは説明を続けます。
「ツリーのように見える部分は、実は鰓(えら)。呼吸を行うと同時に、エサとなるプランクトンをかき集め、体内に入れる役割を担っているんです」
な、なんと!
「胴体は細長い虫のような形で、サンゴの骨格中にイバラカンザシが作った『棲管(せいかん)』という石灰質の細長い穴に隠れています(右下の図を参照)。危険を感じると、鰓の部分を穴に引っ込めるのも特徴です」
聞けば聞くほど驚きです!!
「ツリーに似た鰓の部分は約1㌢程度の高さしかありませんが、本体が潜む穴は細長く、私が調べた個体では、11・7㌢も伸びていました」
あの固いサンゴにどうやって穴を開けているんですか?
「かじるなどして穴を開けているわけではありません。イバラカンザシは、プランクトン幼生期にハマサンゴの表面にくっつき、一生そこから動きません。イバラカンザシがくっついた周囲だけサンゴの成長が阻害されるので、サンゴが育つにつれ結果として穴が開いた状態になります。
そのため、穴の長さはサンゴの年齢に比例しています。穴の深さから計算して、40年は生きている個体もあるともいわれています」
うーむ。なんと不思議な生き物でしょうか。色がいろいろなのは、なぜですか?
「その理由はまだ解明されていません。白、青、オレンジ、黒、黄色をはじめ、柄になっているもの、鰓の根元だけ色が違ったり、上下で異なったりと、いろんなパターンがあり、自分でも分からないくらいです(笑)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「イバラカンザシが群生している姿は、上から見るとまるでお花畑のようですよ」と金井さん。雪は降らない南国の沖縄ですが、その代わり海の中にこんなステキなツリーがあったんですね。ではでは、読者の皆さま、メリークリスマス☆
(写真提供:金井恵さん)