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[No.1622]

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「島ネタCHOSA班」2016年05月26日[No.1622]号

全身が緑色のセミ

 沖縄には、全身が緑色のセミがいるそうですね。聞けば、本島か久米島にしかいないそうなのですが…。今の時期に姿を見せるそうなので、ぜひ調べてください! 

(那覇市 せみまるさん)

全身が緑色のセミ!?

 調査員も、昔はよくセミ採りをしていましたよ。ですが、緑のセミというのは初耳です。本当にそんなセミがいるのでしょうか?

沖縄はセミの宝庫

 というわけで、調査員がやってきたのは、琉球大学内の博物館「風樹館(ふうじゅかん)」。

 出迎えてくれたのは、学芸員の佐々木健志さん。開口一番、「実は沖縄はセミの宝庫なんですよ」と話します。えっ、そうなんですか!

 「沖縄では、1番早いイワサキクサゼミは3月ごろから鳴き始め、1番遅いオオシマゼミは12月ごろまで鳴いていますから、真冬の1〜2月を除き、ほぼ1年中セミが鳴いていますね」

 へぇ〜、いろんなセミが違う季節に鳴いているんですね。

 「世界には、約2千種のセミがいることが知られています。日本国内に生息するのは36種ですが、そのうち19種ものセミを沖縄で見ることができるんです」

 36種のうち19種というと…。国内の半数以上ですか!?

 「はい。しかも、そのうちの6種は沖縄でしか見られないセミなんです」

 沖縄にしか見られないセミがそんなに!

 「セミはあまり長い距離を飛ぶことができず、海を渡るのが苦手です。沖縄のセミの祖先は、琉球列島がかつて大陸と陸続きだった時に、南の方から渡ってきたセミ。海水面の上昇によりいくつかの島に分かれた後、何万年もの長い時間をかけ、島ごとに違った種類へ進化していったんです」

クロイワゼミ

 「全身が緑色のセミ、『クロイワゼミ』もその中の1つで、本島と久米島、瀬底島でしか生息が確認されていない貴重なセミです。中国に似たセミがいますが、体が緑色なのは日本では本種だけです」

 おおっ、すごい! でも、姿を見たことがないのですが…。

 「本島北部の森林には広く分布していますが、中南部では限られた地域でしか見られません。それと、成虫は木の上の高い枝先にいるので、姿を見ることは難しいかもしれませんね」

 標本があるということで、見せてもらうことに。佐々木さんが指し示したのは、体長わずか3㌢ぐらいの小さな標本です。え? これがセミ?

 「クロイワゼミは、体が小さいのも特徴です。小型なことに加え緑の葉の上にいることが多いので(写真①参照)、とても見つけにくいんですよ」

 確かに保護色になっているから発見は難しそうですね。

 「鳴いている木の枝を懐中電灯で照らして丹念に探すと見つかるかもしれませんね。

 一般に、セミは羽化した時は乳白色か薄い緑色で、体が固まるにつれ色が濃くなりますが、クロイワゼミは生まれた時から緑色でずっと色が変わりません(写真②参照)。また、ほとんどのセミは木の幹の1㍍くらいの高さで羽化しますが、本種は30㌢以下の低いところで羽化するのも特徴です」

 地上に現れる時期は?

 「ちょうど今の時期、5月下旬なら薄暗くなった午後7時半ごろからいっせいに鳴き始めて、完全に暗くなる午後8時ごろピタッと鳴きやみます。多くのセミが明るさに反応して鳴きますが、特にこのセミは専門家の間でも時計のようなセミと言われていますね」

 実際に、録音した鳴き声を聞かせてもらった調査員。「チュ、チュ…」と甲高い声が印象的。うーん、ますます神秘的です。

 クロイワゼミについてもっと知りたいという人は、書籍「生態写真と鳴き声で知る沖縄のセミ全19種(鳴き声CD付き)」(新星出版・刊)のほか、琉球大学構内の風樹館内で閲覧できる映像ガイドからも写真を見たり、鳴き声を聞いたりできます。

 風樹館の館内には、ほかにも、珍しい昆虫や動物の標本がズラリと並んでいますから、興味を持った人は足を運んでみるのもオススメですよ。



琉球大学博物館 風樹館
☎098(895)8841
開館時間=平日午前10時〜午後5時
(土日祝閉館)、入場料=無料
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全身が緑色のセミ
佐々木健志さん
全身が緑色のセミ
緑色のセミ、クロイワゼミ(♂)。体長はわずか2〜3センチ
全身が緑色のセミ
羽化した時から神秘的な緑色。死ぬまでほぼ色が変わりません
(写真提供:村山望さん)
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