「島ネタCHOSA班」2016年11月10日[No.1646]号
レンタカーのパンフレットに、「沖縄の道路はサンゴを砕いた石が使用されているため、特に雨の日などはスリップ事故に十分注意が必要となります」という内容が書かれていました。本当にサンゴが混ざっているのですか?
(那覇市 雨男さん)
沖縄の道路は滑りやすい!?
サンゴが混ざっている? にわかに信じ難い話ですが、調べてみなければ分かりません。調査員も軟らかい「琉球石灰岩」が使われているという話を聞いた事もあります。
2億年を経たサンゴ
調査員は、まず本部町の採石場に足を運びました。名護湾を背に、砂ぼこりを上げて走るダンプカー。沖縄の産業と生活を支えてきた力強さを感じます。
さっそく砕石を運ぶダンプカーのベテラン運転手さんに聞き込みを開始!。
「サンゴを砕いた石? あり得ないね〜。道路舗装に使用するバラスト(骨材)は、行政が決めた厳格な基準があるからね。 道路舗装に使用されるのは、古生代(約2〜2・7億年前)の地層から掘られる『本部産硬質石灰岩』。これは、硬くて重いんです。
例えば今帰仁城跡の石積みは中生代の『今帰仁石灰岩』で、中からアンモナイトの化石が見つかる事もある。硬いから、野積みにされています。それに比べて軟らかいのは、新生代の『琉球石灰岩』。中城城跡や座喜味城跡の規則正しい石積みを見れば比較的加工も容易な岩だと分かります」
あまりにも詳しい運転手さん。聞けばこの道40年とか。「石灰岩はサンゴや貝類やウニ、石灰藻球や有孔虫などの骨格部分が堆積したものだけど、石灰岩と言っても、重さや硬さが異なるさまざまな種類がある」
ここ十数年は、道路舗装に本土産の「硬質砂岩」も使われているそうで、表層のすり減りをを比べると、「本部産硬質石灰岩」よりも「硬質砂岩」が有利だそうです。
「その1秒」が急ブレーキに
次は主に国道を管理する内閣府沖縄総合事務局・建設工務室の照屋悟室長を訪ねました。
「確かに本土産の『硬質砂岩』が使われる割合は増えています。特に防音や排水に効果がある『排水舗装』には、『硬質砂岩』が適しています。2000年の沖縄サミット前後、県内では通行量の多い道路を中心に『排水舗装』が施工されました。『本部産硬質石灰岩』は滑るのではないか? との情報が寄せられ、『硬質砂岩』へと変更した経緯があります」
規格を満たしている『本部産硬質石灰岩』は、輸送コストを含めた価格や環境負荷において軍配が上がるそうです。現在でも『密粒舗装』と呼ばれる通常の道路舗装に使用され、県内のインフラを支えていますと、照屋さん。
サンゴを混ぜているのではなく、石がすり減り、路面の補修を控えているような状態が滑りやすくなっているというのが県内の道路事情のようです。
滑りやすい道路であれば、ドライバー自身対策も知っておきたいところです。県警察本部・交通管理官の新木満警視を訪ねました。
「事故の原因を滑りやすくなっている路面だけに求めてしまうのは考えものですね。速度は? 車間距離は? 脇見をしてはいませんでしたか? 車両の整備はされていましたか?」
数々の事故現場を検証してきたプロフェッショナルのプロファイリングに思わずわが身を振り返ってしまう調査員。
「車両が40キロの速度で1秒間走行すると、約11メートル走行します。携帯電話やタバコ、商店や観光施設に気を取られてしまった『その1秒』が急ブレーキを招き、スリップにつながります。人身事故に発展する事案が少なくありません。歩行者や自転車の無理な道路横断も、車両の急ブレーキを誘発します。特に夜間は車両のヘッドライトが届く距離にも限界があり、横断者までライトが届いていない事があります」と訴えます。
スリップや事故を起こす要因に、安全運転の認識の甘さも浮かび上がります。歩行者も注意が必要ですね。調査員も安全運転の認識を新たにしたことは言うまでもありません。