「島ネタCHOSA班」2022年08月04日[No.1943]号
私が小さい頃、祖母が草木の素材で編んだカゴを作ってくれたのですが、 今もやっている人を探してくれませんか?
(名護市 emiばーばー)
草木で作った民具が大ブーム!?
面白い調査依頼が来ました ね。
ではさっそく、自然豊かなエ リアで昔ながらの手作業をや っている方に聞いてみましょ う。八重山伝統民具の製作工房 「やちむん館」(石垣島)に電話 すると、開口一番「ウチでやっ ていますよ〜」との答え。
何でも草木の繊維を使った カゴやバッグ、ぞうり、円座な どを作っているとか。
伝統民具を継承
石垣空港から車で約5分。森 のような9千坪の敷地の奥に ある工房を訪れると、館長の池 原美智子さんがお出迎え。
「自然いっぱいでしょう? 1 978年に創業して今年 44 年 になりますが、民具を作る年配 の方が減っているので、伝承の ためにこの工房を始めたんで す。私は 16 人家族のなかで育っ たのですが、肉、卵、みそ、しょ うゆ、お米は自分たちで作り、 弁当箱も月桃の葉やハマユウ の葉で。枕や円座も自分で作れ ますよ」とにっこり。
草木で作った民具は普段の 生活で使う日用品。池原さんの 祖父は小さい頃、まちに出かけ る時は手作りのアダン葉草履 を履いて出かけ、祖母は草木の 繊維で帽子を作ったとか。母は サトウキビの出荷時期は寝る 暇もなくわらで縄を編み、池原 さん自身も小さい頃は、毎日お 家の五右衛門風呂をたく松脂 (まつやに)は、琉球松からこす り取って使っていたそう。
年配の女性は「ジュズダマ」 という植物の実を使ったアク セサリーを首や手首に付け、タ ンスの虫よけには「ヤマクニブ ー(香草)」。石垣島のイモを使 ったクール(紅露)という染料 の存在も教えてくれました。
「いま家で過ごす時間が増え ているから、実は民具が爆発的 人気。編み物はお家で一人でで きますし、葉や繊維など自然の 素材でできているから、そのま ま外に捨てても土の肥料。これ こそSDGsでエコ。小さい子 どもは喜んで作り ますし、小学生や 大学生の授業や修 学旅行などで講習 をしたり、リモー トで教えたり、県 外の博物館でアダ ンのワークショッ プ。今後は月桃や フェンネルなど沖縄の昔なが らの植物もたくさん育てて継 承したいな」と、キラキラ目を 輝かせます。
草が玩具やお皿に変身
もう1人、本島で活動されて いる方をご紹介。草編みボラン ティア講師などを務める大城 琴紀さん(国頭村)は、さっそ うとした手さばきでクバの葉 を編み込みし、瓶飾りやお皿を 作ってくれました。他にも、バ ッタやかたつむりなどの草玩 具。大人も乗れそうなほど大き なマーニで作った草ソリも!
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最後に「草玩具を使って遊ぶ 子どもたちの姿が見たい」と、 調査員は草玩具作りのワーク ショップを行う「やんばる森の おもちゃ美術館」(国頭村)へ。 ここで、草玩具で遊ぶ親子の姿 をキャッチ!
「もう1時間も遊んでいます (笑)。子どもがとても楽しいみ たいです」(與那嶺勤子さん・ 吏世ちゃん親子) 貝阿弥ひとみさん(館長代 理)は「ここでは電気を使った おもちゃは一切置いていないの ですが、ギャーギャー泣く子や 騒ぐ子はいません。おもちゃの 材料となっている自然の木や 周りの森が、イライラした感情 を吸収してくれているのかも しれません」と話します。
小さい頃ばあちゃんが持っ ていたクバの葉の扇子、おじい ちゃんのクバ笠。あの匂いが恋 しくなった調査員なのでした。
〈取材協力〉
・本田星陶所(那覇市壺屋1‐1‐29)
・喫茶「あがち森」(国頭村字奥間2040‐6)