「島ネタCHOSA班」2023年04月13日[No.1979]号
恩納村にあるパン屋さんが泡盛のもろみを使ったパンを販売してるとい う話を聞きました。泡盛もパンも大好きなのですごく気になります!島ネタ CHOSA班さん、調査お願いします。
(豊見城市 パンスキー)
泡盛のもろみ粕を使ったフランスパン!?
調べると、おんなの駅なか ゆくい市場内にあるパン屋さ ん「acicoco」(以下アチ ココ)の「萬座バゲット」とい うフランスパンだと判明しま した。もろみ粕とはお酒を蒸留 し終えた液状の残りのこと。特 に、泡盛から副次的に生成され るものは「泡盛粕」とも呼ばれ ます。泡盛のもろみ粕を使っ たパンってどんな味なんでし ょうか? パンじょーぐーの調 査員はさっそく恩納村へ向か いました。
地域資源を生かしたパン
調査員を迎え入れてくれたの は、アチココの大城英樹さん。
糸満市出身の大城さんは、 パン職人歴 25 年。高校卒業を 機に県外で10年近く修業し、 2007年に沖縄に戻りパン 屋をオープン。その後、2017 年に株式会社ONNAが経営 するパン屋アチココで働き始 めました。
萬座バゲット開発のきっか けとなったのは2020年。コ ロナ禍で客足が減少し、アチコ コ休業期間中に、同村内にある 泡盛酒造所・恩納酒造所の佐渡 山社長から「泡盛を造る過程で 出てくる『もろみ粕』を使って 何かできないか」という相談を 受けたことがきっかけだった、 と大城さんは話します。
もろみ酢の原料としても知 られている泡盛のもろみ粕は、 その栄養価の高さから、豚など の家畜飼料にも使われていま す。しかし、そのほとんどは産 業廃棄物としてお金を払って 捨てているのが現状でした。
新商品開発を任された大城 さんは、もろみ粕を味見したと きに「発酵した匂いと酸味を生 かせるのはフランスパンしか ないと直感的に思った」と言い ます。
「ただ、フランスパンは他の パンとは違って、卵や砂糖を使 わないシンプルなパンなので、 もろみ粕の割合や、そのときの 気温がダイレクトに味や膨ら みに影響するんです。もろみ粕 と生地のバランスを考えるの がものすごい大変でした」
試行錯誤を繰り返し、一カ月 半。完成したフランスパンは、 恩納酒造所の泡盛の銘柄から 「萬座バゲット」と名付けられ ました。
アチココは、萬座バゲットの 完成をきっかけに営業を再開。 地域資源を生かした新商品と して、萬座バゲットを大々的に 売り出しました。
新しい県産品に
食べてみると、外はカリッ と、中はもちもちとした 食感。ほどよい酸味と芳 醇(ほうじゅん)な香りが 特徴的で、クセになりま すよ!
「どんな料理にも合うの ですが、特に肉料理との 相性は抜群。泡盛などの お酒のつまみとして購入 される方も多いですよ。 オーブンで軽く焼くだけ でも香りやうまみが増し てオススメです。その上 にチーズを載せてみたり、 ちょっと塩をかけてみた り……。オリーブオイル をかけるだけでもおいし いですよ」と大城さん。
萬座バゲットはアチコ コの営業再開と同時期に 恩納村内のホテルへの卸 売もスタート。開発者で ある大城さん自らホテルに足 を運び、商品説明をしていたと いいます。その甲斐もあって、 現在は恩納村内にある3つの ホテルに卸しています。
「卸だけでも、月1000本 近く出ています。だんだんと旅 行客が戻りつつある今、恩納村 の地産地消に力を入れていき たいというホテルからの反応 も良いですね」と大城さんはう れしそうに話します。
萬座バゲットの味にほれ込 んだホテルの宿泊客がお店に も来ることも。中にはネット販 売を通して、県外から定期的に 萬座バゲットを購入する熱心 なファンもいるとのこと。
2021年に、萬座バゲット は地域資源を活用した特産品 として全国的に認められ、全国 商工会連合「2021年度バイ ヤーズルーム」において全国商 工会連合会賞を受賞しました。
今後の展望について大城さ んに聞くと「新しい県産品とし て、萬座バゲットを県内のホテ ルにより多く広めていくのが 目標です。また、県外の方や、 気軽に足を運べない方のため にネット販売にも力を入れて いきたい」と話してくれました。
泡盛のもろみ粕から作られ たフランスパンは、地域資源を 生かした環境に優しい新たな 県産品でした。
Acicoco(アチココ)
国頭郡恩納村仲泊1656-9
おんなの駅 なかゆくい市場内
11:00~17:00
☎098-964-1188
(おんなの駅 なかゆくい市場)