沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.2042]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「島ネタCHOSA班」2024年06月27日[No.2042]号



 先日、生き物に詳しい知人から、山中の川にいるカニは「サワガニ」の 仲間だと教えてもらいました。普通の海で見られるカニとどう違うの? 調べてみてください。 

(宜野湾市 きーむむ)

島ごとに固有種が! サワガニって知ってる?

 離島を合わせると、県内に はなんと 22 種類ものサワガニ がいて(本土はわずか3種)、 ほぼ全てがその島にしかいな い固有種なんですって。

 でも、調査員自身は、海の カニとの違いなどの詳細は知 りません…。

 この機会に学んでみよう と、豊富な知識を頼ったのは、 元県立博物館・美術館副館 長の千木良芳範さん。今回は 「実際に見てみたいです!」と お願いもしてみました。する と「いいよ〜」と優しいお返事 が。夜間、国頭村内の沢に出 かけることになりました。

夜の沢へ

 懐中電灯を頼りに、山中の 上流部を歩いてみると、まず 見つけたのはサカモトサワガ ニ。水深の浅いところから河 原などで見つかるそう。上か ら見ると丸っこい形がかわいら しいです。人が近づくと水中 に逃げる姿も印象的でした。

 サカモトサワガニよりも、 水から離れた場所で見つかる のはオキナワミナミサワガニ。 雑食性で木の実や枯れ葉、ミ ミズや昆虫、小さなカエルやオ タマジャクシ、他のサワガニま で食べるそう。

 オキナワオオサワガニは、名 前の通り大きな種類。甲幅が 5㌢以上にもなります。沢す じの土手を歩いているところ を見つけました。片側のハサ ミが大きいのがオスです(写 真参照)。自然の中で出合う と迫力がありますよ。

 実際に生息地に行くと、サ ワガニたちは種類ごとにある 程度棲(す)み分けをしてい ることがわかりました。沖縄 島には、水中に棲むアラモト サワガニ、石灰岩質の山など で見つかるヒメユリサワガニも 分布しています。

母ガニが子育て

 サワガニ以外にも、川やそ の周辺の陸上(陸域)で暮ら すカニはいます。これらのカニ たちは、普段は陸域に住んで いても、卵を持つ時期は海に 移動、波打ち際で大量の幼生 を放ちます。卵からかえった ばかりのゾエア幼生、続くメ ガロパ幼生はとても小さく、 プランクトンとして海を漂い ます。脱皮を重ねて成長し、 小さな稚ガニになってから上 陸します。

 一方のサワガニは、母ガニが 腹部に大きめの卵を抱いて孵 化(ふか)させます。卵からは 直接稚ガニが孵化。稚ガニは しばらくの間、母ガニに抱か れて過ごします。子どもを確 実に産み、育てる「少数精鋭 方式」なのです。一生の中で一 度も海に出ないので、島ごと に固有種が進化したと考えら れています。

 ところで、千木良さんがサ ワガニに詳しいのは、サワガニ と生息域が重なるカエル類を 長年研究しているからです。 お互いを捕食し合うこともあ るカエルとサワガニ。その関係 を見ることで、やんばるの生 態系全体についても想像が膨 らむのだとか。広い視座を持 ち、夜の沢でこつこつとデータ を集める千木良さんにも驚い た調査員なのでした。

 沖縄のサワガニ類について は、まだまだ未知の部分が多 いのが現状です。「若い研究者 の方々を待っています」と千 木良さんはメッセージを送って くれました。



※野生のサワガニを観察したい場合 は、自然ガイドなど専門知識のあ る人との行動をおすすめします



このエントリーをはてなブックマークに追加


“島ごとに固有種が!
千木良芳範さん
“島ごとに固有種が!
すらっと長い脚が特徴のヒメユ リサワガニ。古い時代の石灰岩質 の山や洞窟に生息しています (オキナワオオサワガニ以外の 写真は村山望撮影)
“島ごとに固有種が!
サカモトサワガニが孵化した稚 ガニを抱いている様子
“島ごとに固有種が!
卵を抱いたミナミサワガニ。産卵 直後のサワガニの卵はビビッド なオレンジ色です
“島ごとに固有種が!
調査員が撮影したオキナワオオ サワガニのオス
>> [No.2042]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>