「島ネタCHOSA班」2024年12月26日[No.2068]号
年明けの1月7日(旧暦12月8日)は、一般にムーチー(鬼餅)に当たりますが、知り合いの住む平安座島では旧暦12月1日がムーチーの日で、芋麦ムーチーが伝統だとか。食べてみたいです
(那覇市 巳年のイモ娘)
平安座島、「ツイタチンナムジムーチー」!?
ムーチーは餅粉を基本にして作るものと思っていたら、芋と麦がメインのムーチーとは…!
「これはもう、味わってみるしかない」。調査員はその知り合いさんをつてに、平安座島のムーチー作りの名人さん、安慶名禮子さん(73)に頼み込んで、旧暦12月1日(ことしは12月31日)を前に昔ながらのンナムジムーチーを作っていただきました。
長男嫁のミーゾーロー(目分量)
勝連半島から延びる海中道路を渡ってすぐの離島、平安座島。周辺離島同様、年中行事は旧暦で営まれています。島の南側、斜面を上り詰めた高台にある安慶名さん宅を訪ねると、輝く白髪に入念なメーキャップ、おしゃれなエプロン姿―。”島伝承のムーチー作りの名人“のイメージは一瞬にして吹き飛びました。
当日、集まってくれた義理の妹や友人らは、ムーチーを蒸した汁を屋敷の四隅にまいたり、食べ終わったカーサ(サンニンの葉)を十字にして玄関先に縄でつるしたりしたそうで、健康祈願や魔よけなどムーチー行事本来のならわしがうかがえます。
ンナムジムーチーは、芋・麦粉・グラニュー糖・餅粉・黒糖を材料に用います。分量を聞くと、「ミーゾーロー(目分量)だね」と安慶名さん。安慶名家の6人きょうだいの長男に嫁ぎ、しゅうとめから受け継いだミーゾーローで自分なりに味加減してきたそうです。
ンナムジムーチーは手始めに、蒸した熱々の芋をつぶします。芋の塊が残らないよう、軟らかさを指の感触で確かめるのだとか。途中、塊を指でつまみ上げると、ひょいと傍らの義妹が受け取り、口に放り込んで笑い合っています。 「義姉さんは材料をミーゾーローにしても、作り方は妥協しない。仕上げは完璧主義」と、ンナムジムーチー作りの名人たるゆえんを明かします。
素朴なもっちり感
芋を均一な軟らかさに整えると、ミーゾーローの麦粉を混ぜ合わせる段に。軟らかさ加減を指の感触で確認しつつ練り合わせています。さらに黒糖を加えると茶色の生地の仕上がりです。「黒糖は風味が増す反面、苦味も出てしまうので産地の1種類を使う」と安慶名さん。
最後にムーチー本来の粘り気を出すために、餅粉を投入。ここでよくもんだほうが粘り気も強くなるとか。餅粉を混ぜ合わせたところで甘さ加減を確かめるのですが、それぞれ好みもあるため、グラニュー糖で調整するそうです。
ンナムジムーチーの生地は硬くなりやすく、すぐにカーサで包み込み蒸し上げます。1時間ほどたって、香ばしいカーサをほどくと、中身は餅というより素朴なういろうに近いもっちりとした食感と滋味。「これぞ昔懐かしいおいしさ」と、感嘆の声を上げた調査員でした。