「島ネタCHOSA班」2025年01月16日[No.2070]号
昔は畑の周りなどでもよく見かけた“ウズラ”。最近見かけなくなったなあと感じています。数が減ってしまったのでしょうか? 改めてどんな鳥なのかも知りたいです。
(南城市 どーちー)
見たことある? 畑の鳥ミフウズラ
ウズラですか、調査員も子どもの頃、サトウキビ畑で見た記憶があります。そういえば最近は見たことないなあ…。少し調べてみると、県内に生息しているのは正確には「ミフウズラ」という種類だとわかりましたよ。
特徴や生態についてさらに詳しく知ろうと、調査員が連絡を取ったのは渡久地豊さん。鳥類のエキスパートで、名護市にある屋我地鳥獣保護区の管理員を務めています。現在は同市呉我区の区長もしているとのことで、公民館に伺いました。
”ウズラ“ではない
「ミフウズラは方言ではウジラーといいます。呉我ではウムドゥイ(芋鳥)ともいいますよ。芋畑にいるからこの呼び方になったようです」
そう教えてくれた渡久地さん。ウチナーグチでの呼び名がある、ということは昔から身近な鳥だったといえますね。全長は約14㌢。基本的には地面を歩いて生活し、飛ぶことはあまりないようです。エサは小さな昆虫やカタツムリ類、それに植物の種子などです。国内では奄美大島以南に分布し、サトウキビ栽培が盛んな多良間村では村鳥にも指定されています。「前後にスイングするように歩く姿がユーモラスで、見つけるとうれしくなります」と渡久地さんは笑顔で話します。
ちなみに、スーパーなどで卵が売られているウズラはミフウズラとは別の種類(!)。分類上もウズラはキジ目、ミフウズラがチドリ目で、かなり離れているんです。
人知れず減少
地味なポイントですが、足の形にも特徴があります。ミフウズラの足の指は3本です。指は3本とも前方に伸びているそう。名前の「ミフ(三跗)」はここを意味しているんですって。
子育てもユニークです。メスは繁殖期になると「ブーゥ、ブーゥ」と鳴きパートナーを探します。しかし、繁殖後は卵やヒナの世話を全くしないのだとか。そのかわりオスが子育てを全て引き受けます。種が生き残る戦略として、メスが繁殖活動を活発にして、卵を生む回数を増やす、という方法を取っているようです。
そんなミフウズラですが、人の目に触れる機会が減っているのは、サトウキビ畑や芋畑といった生息環境が減っていることに加えて、マングースや野ネコによる食害がある、と渡久地さんは考えています。沖縄島北部などではどうにか個体数を維持できている状態のようですが、中南部では見つけることも難しくなってしまいました。環境の変化が少ないと考えられる離島では現在も当たり前にいます。マングースのいない伊計島や伊平屋島だと一般の人にも観察しやすいそうですよ。
「ミフウズラは、昔は舗装されていない農道に行けば見られる”普通の鳥“でした。身近な生き物も人知れず減少していることがあるんです」
そう話した渡久地さん。環境の変化は身近なところにも現れているかもしれません。昔はよくいたなあ、という小さな生き物のこと、ちょっと思い出してみてください。
もしミフウズラを中南部で見かけたら、レキオ編集室に情報をお寄せくださいね。