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[No.2077]

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「島ネタCHOSA班」2025年03月06日[No.2077]号



 全国の自治体などが、地域おこしの一環として、数々の漫画コンテストを開催しているのをご存じでしょうか。その中で受賞多数の実績を誇るウチナーンチュがいます。今回の島ネタCHOSA班では、その方を紹介します。

漫画コンテスト猛者のウチナーンチュ!?

 漫画賞というと、プロを目指す漫画家の登竜門というイメージがありますよね。その一方で、全国各地の自治体が開催する漫画賞の多くは、4コマ漫画や1ページ漫画など、プロ志望の描き手でなくとも挑戦できるコンテストになっています。

大学教授にして美術家

 その中で、各地の漫画賞の最優秀賞をはじめ、何度も受賞を重ねる猛者がいます。その方こそ、今回紹介する喜久山悟さん。お名前から推測できる通りウチナーンチュで、現在、熊本大学大学院教育学研究科の教授を務めており、美術科教育を専門としています。調査員は今回、オンラインで詳しくお話を聞くことができました。

 喜久山さんは、具志川市(現うるま市)宮里の出身。漫画が好きで「授業中にも漫画を描いているような子どもだった」と振り返ります。ただしプロの道には進まず、熊本大学教育学部へ進学。さらに横浜国立大学の大学院で美術教育を研究し、漫画を美術教育に生かす方法を研究テーマに選んだそう。

 大学院修了後は、東京のこどもの城(国立総合児童センター)造形スタジオで、子どもたちへの造形指導を行い、いろいろな教材やプログラムの開発を手掛けました。その後、鳥取大学に勤務し、2013年に熊本大学の教授に就任。美術教育や沖縄美術の歴史研究などを主な専門分野としていますが、自ら美術作品を制作することも大好きで「平面・立体問わず、さまざまな作品を作っています」と笑います。

 社会への美術の普及にも力を注ぎ、伊計島を舞台にした地域活性化事業「イチハナリアートプロジェクト」の企画を立ち上げたのも喜久山さんの功績です。

各地の漫画賞を多数受賞

 そんな多彩な喜久山さんですが、漫画との関わりはというと…。2003年に、当時、漫画のオリンピックともいわれた「読売国際漫画大賞」で優秀賞、06 年に金賞を受賞。「授賞式には、皇族もいらっしゃった」とのことで、うれしい記憶として残っているそうです。

 その後、しばらく漫画の制作を中断していましたが、17年に娘さんが高知市・横山隆一記念まんが館主催の「まんがの日記念・4コマまんが大賞」ジュニア部門で受賞したことに触発され、翌年自身も応募したところ、見事に大賞を受賞。それを機に、全国の自治体主催の漫画賞に作品を応募するようになり、それらの作品が数々の賞に輝いています。

 現在、受賞歴は15回を数え、特に先の「まんがの日記念・4コマまんが大賞」では、昨年10月にも2度目となる大賞を受賞。すごい! 喜久山さんの作品は、絵の技術力はもちろん、卓抜なアイデアや高度な風刺が審査員からも高く評価されています。

 「漫画は絵で面白く見せることが重要。サイレントでも成立するような作品を心がけています」と喜久山さん。「いいアイデアは、脂汗をかかないと出てきません。全国の自治体の漫画賞には、プロも応募してきていて、生半可な気持ちではかなわない」と力を込めて語ります。

 漫画賞への応募にとどまらず、23年には、沖縄戦体験者の手記を基にした40 Pのストーリー漫画も発表(齋木喜美子編集『戦後沖縄史の諸相』収録/ 関西大学出版会)。こちらも力作ですので、興味のある方はぜひご一読を。今後も、喜久山悟さんの漫画に注目です!



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“漫画コンテスト猛者のウチナーンチュ!?"
喜久山悟さん(本人提供)
“漫画コンテスト猛者のウチナーンチュ!?"
「第20 回まんがの日記念・4コマまんが大賞」で大賞に輝いた喜久山悟さんの4コマまんが「オムライス破れて惨禍あり」。オムライスで世界の紛争を表現したアイデアに圧倒されます
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