「表紙」2013年11月21日[No.1494]号
心一つにペダルこぐ
そろいの赤のジャージーを着て疾走するメンバー。FM沖縄の「ゴールデンアワー」のパーソナリティー西向幸三さん(41)が、趣味を同じくする熱心なリスナーに呼び掛けて結成した「ゴールデンアワー自転車部」。普段は思い思いのペースで練習し、情報交換のため不定期で集まる。年に一度のロードレース出場直前には互いの調子を確かめながらトレイン(隊列)で仕上げに打ち込む。「実力も年齢も違いますが、みんなで一緒に走れることが楽しい。雰囲気は最高です」と呼び掛け人の西向さんは笑顔で話す。
番組名胸に走る
「きっかけは、局長の一言だったんです。もう、幸三さんはゆるいんですよ」と、「ゴールデンアワー自転車部」の部長・山田春生さん (43)は、結成当時を振り返り、なぜか苦笑。FM沖縄の人気番組「ゴールデンアワー」のリスナーで結成された同部は、番組内でパーソナリティーを務め、「局長」と呼ばれる西向幸三さんが自転車好きのリスナーへ呼び掛けてスタートした。
「オフ会で局長が何気なく『ジャージー作ろうよ』って。その後は僕らに丸投げだったんですよ」。以前からリスナー同士の結びつきが強く、西向さんが約7年趣味で続ける自転車を話題に集まることも多かった。
結成されたのが2011年5月。メンバーは男性12人、平均年齢は37歳だ。仕事を持ちながら、普段はそれぞれに練習。秋に行われるロードレースへの出場を目指す。練習日は沖縄市に集合し、うるま市与那城の宮城島まで、トレイン(隊列)で往復する。
技術よりマナー
競技に参加するためには、ロードレース用の自転車や専用ウエアが必要となるなど、装備に費用が掛かる。「10万円以上するバイクを使いますから、軽い気持ちではできないかもしれません。その分メンバーは、自分の『相棒』をとても大事にしているんですよ」と西向さんは話す。ピカピカに磨かれ、体に合うよう調整された自転車が、普段の丁寧な手入れを物語る。
「ロードバイクの場合、脚力が100%ペダルに加わるよう、クリートというものでペダルとシューズを固定します」。ペダルに付いたクリート上で圧力を掛けると固定し、信号待ちや下りるときは外側にスライドすると外れるようになっている。「初心者はタイミングを間違えて転倒することがよくありますね」。競技歴6年の山田さんでも、疲れていたり集中力を欠いたりすると転倒のアクシデントを起こすことがあるという。集団での競技だけに、一人の転倒が大きな事故へとつながることもある。「距離やタイムももちろん大事ですが、僕らが一番大切にしていることは、マナーなんです」と山田さん。
普段の練習から、交通ルールやマナーを守ることを徹底して部員同士共有している。大好きな「ゴールデンアワー」をジャージーの胸に入れているから。リスナーの誇りだから。「入部条件もモラルが守れるか、ルールを分かっているか。それだけです」。山田さんは、真剣なまなざしで話す。
紳士のスポーツ
「ゴールデンアワーを通じて自転車好きのナイスガイが集まってくれた。局長はやる気がなくてタイムも遅いですが」とメンバーを前に謙遜する西向さん。自転車は紳士のスポーツだと語る。たとえライバルでも、給水に失敗したら自身のドリンクを渡すことも。トレインでも最前列の競技者は風当たりが強くなるため、ローテーションで入れ替わりながら自転車を進める。さらに、競技の途中で転倒者を待つこともあるという。
「一人で走るのも楽しいけど、ナイスガイと一緒はもっと楽しい。最高ですね」と、言葉を弾ませるメンバー。それぞれラジオネームで呼び合う仲間たち。「そういえば、メンバーの本名分からないなぁ」と山田さんがつぶやくと一同笑顔に。
「これからも頑張ろう!」「局長が一番頑張らないと!」。ラジオに魅せられた男たちが、息を合わせてペダルをこぐ。秋の風が心地良く吹いていく。
島 知子/写真・呉屋慎吾
FM沖縄の「ゴールデンアワー」(月〜金:14時〜15時50分)のパーソナリティーで、「局長」こと西向幸三さんが自転車好きのリスナーに呼び掛けて発足。そろいのジャージーを作り2011年5月に活動をスタート。現在メンバーは男性12人。昨年始めたばかりの人からトライアスロンの常連まで競技歴はさまざま。普段は仕事をしながら個人で練習を重ね、不定期で集まっている。マナーとモラル、ルールを一番に大切にするナイスガイ集団。ラジオ大好きリスナー・サイクリストだ。
Kibito0319@gmail.com〔山田〕