沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1564]

  • (金)

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「表紙」2015年4月9日[No.1564]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 2

沖縄第一ホテル
島袋 芳子さん 渡辺 克江さん

理解し合えるビジネスパートナー

 沖縄の島野菜や旬の食材をふんだんに取り入れた「薬膳朝食」が評判の沖縄第一ホテル。創業60年の老舗のホテルは、全国に多くの常連客がいて、著名人のファンも多い。部屋数が5部屋の小ぢんまりとしたホテルで、国際通りのすぐそばにありながら隠れ家的な趣を漂わせている。

 そのホテルを切り盛りするのは創業者の島袋芳子さん(88)と次女の渡辺克江さん。お客さまを第一に60年間ホテルのために働き続けた母と、ホテルで生まれ育ち母の背中を見て成長していった娘、ホテル経営を通じたそれぞれへの思いを聞いてみました。



お客さまの喜びが母の活力源

 沖縄第一ホテルが誕生したのが1955年。那覇市安里にあった「オールクラブ」という元料亭を住宅にしようと購入したのがきっかけだった。

 建物を一部取り壊して改装するが、芳子さんと元ご主人と幼い長女の3人で住むには広すぎる家だったことから、芳子さんは「こんな広いところに住むだけではもったいないと思っていたら、母がいつも自分の夢は旅館をやること、ホテルの仕事がやってみたかった」といっていたことを思い出す。

 それからホテル経営を始めた。

 その後、克江さんが生まれ、しばらくして芳子さんは女手一つで2人の子育てしながらホテルを経営することになる。「当初、12室もあったが、お客さまに目が行き届くサービスができないと考えて2室を1室に改装して、最終的には7室にした」と芳子さん。

 薬膳の朝食を出すようになったのは、日本や外国でもホテルの朝食はパンと卵、瓶詰めや缶詰のジュース、ベーコンやハムなどしか出てこないことから。同じものだとつまらないと思い、沖縄らしいものはないかと考え、母親が作ってくれたシンジグスイ(薬膳)をヒントに料理を出してみると、お客さまが喜んでくれた。その姿をみて一品一品増やしていった。すると、お客さまがもっと喜んでくれたので、品数はさらに増え今では50品目585㌔カロリーの朝食になった。

 「沖縄の人の昔からの習いでアリンカメー、ウリンカメー(あれも食べなさいこれも食べなさい)と言って、いろんなものを出したのよ。そしたらお客さまが喜んでくれてね」



母の後を追うのが精いっぱい

 克江さんは生まれも育ちも第一ホテルで、ロビーが居間であり勉強部屋だったといい、いずれホテルを継ぐと小さい頃から思っていた。「私も母と同じように人が好き、お客さまと接することが好きだったので、ごく自然にホテルを継いでいました」と言う。

 社会人になってテレビ番組のレポーターやアナウンサーの仕事をするが、「母が体調を崩したことがきっかけで調理師学校へ行き、本格的にホテルを手伝うようになりました」

 克江さんは子どもながらに、母が子育てをしながら朝食を作り、ホテルの客を見て、寝る間を惜しんで働く仕事ぶりを目の当たりにした。

 さらに「母の子だからこの仕事が好き。今も楽しいし。やってよかった」ともいい、母親を見習うところは全部と答えた。

 克江さんは、よく母のことを聞かれるというが、子どものころからホテルの手伝いをしていたので、母親を超えるとか追い抜いてやると思ったことは一度もなく、そういう発想さえなかったという。「お手本とする人として、目の前で働く母親がいたわけですから。目標であり学ぶことがたくさんある人なので、母として仕事の先輩として誇りに思い、尊敬しています」

 芳子さんは克江さんに面と向かっては言えないが、ホテルのためにいろいろな勉強をしているところが偉いと評価する。また、考えを継いでホテルをやってもらうことに、うれしさを隠し切れない。

 母娘でありながらビジネスパートナーの2人。お互いに似ている点も多く、「言いたいことを言い合うことで、相手が見えてくるので、だからよくけんかもするよ」と芳子さん。克江さんは「小さいホテルでよかったです。人とのつながりも見えて。小さい時から知っている家族のようなお客さまは、母が長年かけて作り上げてきた信頼であり、財産なのです。その母の思いをしっかりと受け継いでいきたい」と語った。



(嘉手川 学) 写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)



プロフィール

島袋芳子さん
昭和3年台湾生まれ。88歳。父親が那覇の商業学校を卒業後、台湾の総督府の会計として勤めていているときに誕生。戦時中は台湾にいた。戦後は強制送還で沖縄に帰ってきた。10人姉弟の長女。1955年に沖縄第一ホテル創業。2011年9月に現在の場所に移転

渡辺克江さん
4代目ミス沖縄に選出されたことがきっかけでテレビ番組のレポーター、ニュースキャスターを務める。その後、調理師免許を取得し、本格的に家業を手伝う。野菜ソムリエ、国際中医薬膳師、フリーアナウンサー

沖縄第一ホテル

那覇市牧志1-1-12
☎ 098-867-3116
FAX 098-867-3117
http://okinawadaiichihotel.ti-da.net/


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沖縄第一ホテル
オオタニワタリや宮古ぜんまい、長命草など島野菜をたっぷり使った人気の薬膳朝食を前にした、島袋芳子さん(右)と渡辺克江さん(左)。沖縄第一ホテルにて=那覇市牧志

沖縄第一ホテル
市街地とは思えないほど静かなホテルの中庭で
沖縄第一ホテル
料理の盛り付けはお手のもの
沖縄第一ホテル
陶器が大好きな芳子さん 
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