「島ネタCHOSA班」2013年05月09日[No.1466]号
西原町に「運玉(うんたま)食堂」、沖縄市に「ぎる〜食堂」という面白い名前の店があります。どちらもメニューが独特。関係性があるのか調べてください。
(H.Hさん)
ウンタマギルーが食堂経営?
「運玉」に「ぎるー」。運玉義留(ウンタマギルー)が浮かびますね。西原町の運玉森(ムイ)に住み、金持ちから金品を盗み、貧しい人たちに分け与えた義賊として知られます。両店に関係はあるのでしょうか?
まずはご当地・西原町池田の「運玉食堂」を訪ねました。メニューでは義留が紹介され、「運玉義留物語=そば」、「西原親方(ウェカタ)物語=中華」、「運玉森物語=チャンプルー・炒め物」といった構成になっています。
迫力の看板メニュー
中でも一番人気という「チキンカツチャーハン」(750円)を注文。運ばれてきた皿を見て、思わず店員さんに助けを求める調査員。「これ一人前ですか? …無理」。「大丈夫ですよ、持ち帰り用の折り箱を用意していますから」。甘いアイスティーの横に大小の折り箱が。大にチャーハンを詰められるだけ詰め、小にチキンカツ半分を分けて食べましたが、もうおなかパンパン。
代表の田畑優子さん(40)は、「初めて見た方は、皆さん笑ってしまいますね」とにっこり。「お米だけで450g使っています。商売としては苦しいんですけど、楽しみにいらっしゃるお客さまが多いので価格に反映するわけにはいきません。うちの看板メニューなので簡単には下ろせませんね」と話します。 独特のメニュー表にはどんな思いが?「メニューや店名に地域色を出しているのは、地元に愛される店になってほしいからなんですよ」。作業服の団体や学生さん、家族連れなどがひっきりなしに訪れる様子からも、田畑さんの思いが伝わっているのを感じます。では田畑さん、沖縄市の「ぎる〜食堂」は系列店ですか? 「いえ、知りませんでした」
偶然のネーミング
沖縄市登川にある「ぎる〜食堂」は、安座間豊さん(52)が2012年4月にオープン。目を引くのが「あのたんぽぽ食堂の幻のカツ丼」(590円)。
「家の近くにあった『たんぽぽ食堂』は、人気の有名店でした。伊佐さんというおばあちゃんと娘さん二人で切り盛りしていたんですが、別の方に店を任せると聞いて、カツ丼のレシピを伝授してもらったんです」。食事時にはタクシーが列を成し、オーナーチェンジを知った常連さんが「あのカツ丼がもう食べられなくなる!」とラジオに投稿したほどだそうです。
「僕は20年以上花屋をしていたんですが、どうしてもあのカツ丼を復活させたくて。花屋は妻に任せてお店を開いたんですよ」と安座間さん。ではなぜこの店名に? 「実は、ネーミングに悩んでネットサーフィンしている時に、なぜだか運玉義留が出てきたんです。これだ! と思って。義留とドゥマンギルー(驚く)の意味を込めたんですよ」。全くの偶然だったわけですね。「幻のって付けたのは、沖縄で、いや世界中でたんぽぽのカツ丼を作れるのは僕だけだから。怒られないよね? はっはっは」と少年のような笑顔を見せる安座間さん。
いとおしそうに運んできた「幻のカツ丼」を一口。サクサクに上がったカツに絡むカツオと豚骨を使ったしょうゆだし。「ガテン系のお客さまや学生さんが多いので、塩分はしっかり効かせています」と言う通り濃いめの味付けながら、温泉卵とタマネギがやさしい後味を演出しています。「余計な物は一切入れてないんですよ。これもたんぽぽの基本ですね」。誇らしげに語る安座間さんの笑顔に見送られて、店を後にしました。
今回訪れた二店、関係性はありません。ですが、運玉義留のように庶民に愛される食堂として頑張ってほしいな、と思う調査員なのでした。